研究課題/領域番号 |
23390263
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川上 和義 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10253973)
|
キーワード | クリプトコックス / 免疫記憶 / メモリーT細胞 / エイズ / 内因性再燃 / マンノプロテイン / 自然免疫 |
研究概要 |
クリプトコックスはエイズの重要な日和見病原真菌であり、エイズの進行とともに重篤な髄膜脳炎を引き起こす。近年、クリプトコックス症は免疫低下による内因性再燃として発症すると考えられており、その病態を解明するために、マウスのクリプトコックス持続感染モデルを用いて感染後のメモリーT(Tm)細胞の動態について解析を行った。クリプトコックス感染後の肺では、3から5日にかけてCD44^<bright>CD127^-エフェクターT細胞が増加し、その後2から3週にかけて減少した。一方、5日から3週にかけてCD44^<bright>CD127^+ Tm細胞の増加が観察され、CD4^+細胞はほとんどがCD62L^+(エフェクターTm)であったのに対してCD8^+細胞ではCD62L^+(セントラルTm)が優位な集団であった。興味深いことに、感染3日後の早期に、肺内のCD4^+ Tm細胞、CD8^+ Tm細胞が大量のIFN-γを産生することを見出し、自然免疫相で積極的に感染防御に関与する可能性が示唆された。また、感染7日後にはTh1型のみならずTh17型のTem細胞の存在も確認された。これらの解析はC57BL/6マウスを用い、表面抗原解析のみでTm細胞の同定を行ったことから、必ずしもクリプトコックス特異的なTm細胞を検出しているわけではない。そこで、特異的なTm細胞解析を行うためのプローブとして、本真菌の主要なT細胞抗原であるマンノプロテイン(MP98)から決定した抗原エピトープを結合したMHCIIテトラマーの作製を試みており、今年度はMP98の細分化と大腸菌発現システムの構築を行った。また、Tm細胞のより正確な解析を目的として、同エピトープに特異的なT細胞受容体を発現したトランスジェニック(Tg)マウスの作製を試みており、'今年度はMP98応答性T細胞ハイブリドーマP1D6からT細胞受容体α鎖、β鎖遺伝子の未知塩基配列を決定し発現プラスミドに組み込んだ。次年度はTgマウスの作製を完了し、MHCIIテトラマーをプローブとして用いることで、クリプトコックス特異的なT細胞免疫記憶応答機構の解析を実施する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に従って通常のC57BL/6マウスを用いてクリプトコックス感染後のメモリーT細胞の解析を行ったが、予想以上に非特異的なメモリーT細胞の存在の影響が大きいことが分かったため、その影響を極力排除するために、当初の計画にはなかったがクリプトコックス応答性T細胞の抗原受容体遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの作製を実施することにしたため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って研究を実施するが、「11.現在までの達成度」に述べた問題点への対応策として以下の点で変更を加える。クリプトコックス応答性T細胞の抗原受容体遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製し、これを用いることで感染後のメモリーT細胞の解析を実施する。併せて、抗原特異的なメモリーT細胞を検出するためのプローブとして、抗原エピトープ結合MHCクラスIIテトラマーとともに、T細胞受容体のクロノタイプ特異的単クローン抗体を作製することでより効率的で確実な解析を実施する。
|