研究課題
クリプトコックスはエイズの重要な日和見病原真菌であり、重篤な髄膜脳炎を引き起こす。近年、クリプトコックス症は免疫低下による内因性再燃として発症すると考えられており、その病態解明のためにマウスの持続感染モデルを用いてメモリーT(Tm)細胞の動態を解析した。本モデルでは、肺内生菌数が感染後徐々に減少するものの、7ヶ月後でも500CFU/マウス程度で感染が持続した。このマウスにデキサメサゾンを投与すると、有意に菌数が増加し感染の再燃が観察された。この時の肺内におけるTm細胞を解析すると、内因性再燃群においてIFN-γを発現するTm細胞の減少が観察され、このことが免疫不全にともなう内因性再燃の発症と深く関連していることが示唆された。しかしながら、これらの解析は細胞表面マーカーのみでTm細胞の同定を行ったことから、必ずしも抗原特異的なTm細胞を検出しているとはいえない。そこで、本真菌の主要なT細胞抗原であるMP98に特異的な受容体(TCR)を発現したトランスジェニック(Tg)マウスの作製を試み世界に先駈けて成功した。このTgマウスの脾細胞はMP98刺激により、著明な増殖反応、IL-2、IFN-γ産生を示したのに対し、コントロールマウスではまったく反応しなかった。クリプトコックス感染により、コントロールマウスに比べ肺内で顕著なIFN-γ産生がみられ、真菌排除が促進した。感染後3日目という急性期に肺内で著明なTm細胞の増加が観察されたが、Tgマウスを用いた解析から、初期のTm細胞の増加は近年注目されているtissue-resident Tm(Trm)細胞によるものであることが明らかとなり、感染7日目以降は抗原特異的なTm細胞の動態を明確に追跡することが可能になった。Trm細胞は細胞内にIFN-γを発現しており、抗原特異的なTm細胞のみならず、自然免疫の時相においてもTrm細胞から産生されるIFN-γが感染防御に重要な役割を果たすことが示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Infection and Immunity
巻: 82 ページ: 1606-1615
10.1128/IAI.01089-13