研究概要 |
本研究は既存の抗HIV剤の標的とは異なるHIV-1 protease (PR) の二量体形成過程に注目、その阻害剤開発に特化したものである。研究代表者のグループはこれ迄にPRの二量体形成を阻害する複数の候補化合物を同定・開発しており(Koh & Mitsuya, JBC. 2007)、本プロジェクトでは同様の新規抗HIV-1剤の開発と作用機序の解析を通して、HIV-1増殖の分子機構とPR生成のダイナミクスを明らかにしようと試みた。我々はさきに米国グループと共同開発したHIV-1 PR阻害剤(PI)、darunavir (DRV)の実用化に成功したが、DRV不応臨床例からの変異HIV-1株がPR領域にV32I, L33F, I54M, I84V変異を有している事を発見、これら4変異を同時に有する変異株ではDRVのPR 二量体形成阻害能が失われる事を報告(Koh & Mitsuya, J Virol, 2011)、またTp-THF構造を持つ新規PIであるGRL-1398A等(Ide & Mitsuya, AAC, 2011)を報告したが、当該年度でも既存PI、tipranvirがPR二量体形成阻害能を有し、一定のアミノ酸変異でその二量体形成阻害能が喪なわれることを報告した(Aoki & Mitsuya, J Virol, 2012)。更にoxatricyclic構造を有し、DRV高度耐性株を含む広域なスペクトラムの薬剤耐性株の増殖を強力に阻害し、かつHIV-1の耐性化が極めて生じにくいGRL-0519(Ghosh, Amano & Mitsuya, ChemMedChem. 2010, Amano & Mitsuya, AAC. 2013)等の新規PIsを報告した。これらのPIsは臨床試験移行を前提に検討中である。
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