研究課題/領域番号 |
23390267
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
呉 繁夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10205221)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217548)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | モヤモヤ病 / 発症機序 |
研究概要 |
モヤモヤ病(MMD)は両側ウイリス動脈輪の閉塞と異常側副血管新生による脳虚血・出血を特徴とする。我が国のMMDは、患者の約半数は小児例で、小児脳卒中の主因であるため、小児疾患として重要である。私達はMMD日本人患者を対象に、全ゲノム相関解析を行い、染色体17q25-ter領域から疾患感受性遺伝子RNF213を同定した。更にこの遺伝子変異解析によりMMD患者の72%に共通であるアミノ酸置換を伴う創始者点変異を同定した。RNF213機能は未解析であり、変異蛋白質がどのような機序で脳血管障害に至るかは不明である。本研究では、遺伝子改変マウスの作成と解析により、RNF213遺伝子の生理的役割を解析し、脳血管狭窄と異常側副血管形成の発症機序の解明を目的とする。Rnf213遺伝子をコンディショナル・ノックアウトしたマウスの作成は平成23年度に終了し、そのホモ接合体マウスを作成後、機能喪失を誘導している。平成24年度は、日本人創始者変異をノックインしたRnf213遺伝子を持つマウスの作成した。具体的には、Rnf213遺伝子のエクソン60に存在する日本人創始者変異に相当するアミノ酸置換をマウスに導入する。導入した変異アレルのヘテロ接合体マウス同士の交配により、ホモ接合体マウスを作製した。誕生したホモ接合体マウスは、生存した状態で誕生し、その後も健康状態に問題は無かった。このマウスの血管走行や血管壁の病理的解析を実施したが、正常マウス、ヘテロ接合体マウス、ホモ接合体マウスの間で肉眼的、顕微鏡学的な差は見い出せなかった。現在、種々の負荷を与えた場合の反応の違いを検索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、平成23-24年度にRnf213遺伝子の遺伝子改変動物を作成し、平成25年度にその解析を実施する計画となっている。平成23年度は、Rnf213遺伝子のコンディショナル・ノックアウト・マウスの作成に成功し、現在ホモ接合体の作成と機能喪失の誘導を行っている。平成24年度は、日本人高頻度変異を導入したノックイン・マウスの作成にも成功した。現在そのホモ接合体マウスの作成と、得られたマウスの解析を開始した。血管走行や組織の病理学的検索も実施を既に開始しており、ほぼ計画通りに研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、最初のMMD感受性遺伝子であるRNF213の機能及び生理的役割をノックアウト・マウスおよび日本人創始者変異を導入したノックイン・マウスを作成・解析する事により理解し、MMDにおける脳血管の狭窄と側副血管の異常新生の発生メカニズムを解明する事を目的としている。既に、コンディショナル・ノックアウト・マウスと日本人高頻度遺伝子変異を導入したノックイン・マウスの作成に成功しているので、最終年度である平成25年度は、これらのマウスの解析を実施する。具体的には、研究計画書に記載の病理学的検索と血管の病理学的所見に異常が認められるマウスの脾細胞の初代培養を用いたサイトカイン産生の評価(特に血管新生因子の産生状況)を行う。血管内皮細胞機能の検索をこの検索により、ノックアウト・マウスとノックイン・マウスの持つ機能的な相違点を明らかにし、RNF213遺伝子変異の生理学的、病理学的意義の解明を目指す。
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