研究課題
(1)CVID、非CVID疾患における免疫学的寛容破綻機の解析:1)非CVID疾患:WAS.V(D)J再構成異常症,ALPS,IPEX症候群:明らかに自己免疫疾患を呈したWAS,ALPS,Artemis欠損症については、10パラメータFACS解析で、詳細な免疫細胞亜群を測定した。さらにTh subsetを解析したところ、WASや一部のALPS like疾患においてTh17の減少を認めた。また次世代シークセンサーによる1g遺伝子のCDR3領域の塩基配列解析体制を確立した。2)CVID:本年度は90名のCVID患者において、T,B,DCサブセットやThサブセットについて詳細な免疫学的解析情報を集積し、データベースを構築した。(2)自己免疫疾患を呈するCVIDのクラスター分析と候補遺伝子予測:B細胞新生能を反映するsjKRECs、T細胞新生能を反映するsjTRECs解析から、sjKRECs陰性、sjTRECs正常あるいはsjKRECs正常、sjTRECs陰性群に自己免疫疾患が多いことを明らかにした。また自己免疫疾患を呈するCVIDにつき、免疫細胞サブセット、身体所見、合併症、検査データなどから特徴的な群が存在することを明らかにした。記憶B細胞が減少する症例では、naive Bをsortingし、健常人のそれとmRNA発現の差異を比較した。さらに、これらの患者では既知の報告から抽出・展開された候補遺伝子データベースと照合して候補遺伝子として2,476遺伝子を抽出した。(3)Targeted re-sequencing、全エキソン解析による体系的遺伝子解析:家族歴のある8名の患者のDNAを用い、454シークエンサーにより上記2,476遺伝子の全エキソン解析を行った。SNPを排除した上で、複合ヘテロ接合体あるいは優性阻害変異を抽出し、候補遺伝子はSanger法で確認した。その結果1名では候補遺伝子を絞り込み、機能解析の準備が整った。また5名の患者では、Illuminaを用いて全遺伝子エキソン塩基配列決定を行った。SNP排除の上、まずホモ接合体あるいは複合ヘテロ接合体の候補を探索し、それぞれに30-40遺伝子に絞り込んだ。
2: おおむね順調に進展している
非CVID患者における免疫学的寛容破綻については多角的免疫パラメータ解析データが集積した。CVID患者については90名の患者で免疫学的情報データベースが構築され、さらに予定よりも早く候補遺伝子探索アルゴリズムが決定した。その結果8名でdeep sequendngが、また5名で全エキソン塩基配列決定が行われた。CVIDにおける自己免疫寛容破綻の分子異常解明に一歩近づいたと考えている。
次年度には責任遺伝子の同定にまで至ることを目的として検討を続け、責任遺伝子産物の機能について、適切な免疫担当細胞において、遺伝子発現抑制、変異遺伝子導入などの手法により、検討を進める。また正常および変異組換え遺伝子産物の作成などにより、機能解析を深める。CVIDおよび非CVIDで明らかになった免疫学的寛容の破綻は、鍵となる免疫担当細胞にタンパク導入を行い、機能が回復するかを検討する。今のところ3年目に遺伝子改変細胞や遺伝子改変モデル動物作成を予定しているが、研究が予想以上に進展した場合にはこれらの実験が前倒しとなることも考えられる。その場合には、モデル細胞作成を優先し、モデル動物については共同研究者との枠組みの中で、できるだけスピード感をもって研究を進めることとする。
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