研究課題/領域番号 |
23390270
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森尾 友宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30239628)
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研究分担者 |
小原 收 公益財団法人かずさDNA研究所, ヒトゲノム研究部, 部長 (20370926)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分類不能型免疫不全症 / 免疫学的寛容 / 自己免疫疾患 / 責任遺伝子探索 / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
(1)CVID、非CVID疾患における免疫学的寛容破綻機構の解析:1)T細胞受容体遺伝子の使用の偏りについてはVbetaレパートア解析とCDR領域のspectra typingを確立した。またIgGの体細胞超変異についてはVH23領域のサンガーシークエンスによりその偏りについて検討する手法を確立した。2)CVIDについては前年度に引き続き、約30名の患者においてT, B, DCサブセットやThサブセットについて詳細な免疫学的解析情報を集積し、データベースの拡充を行った。 (2)自己免疫症状を呈するCVIDの責任遺伝子同定:平成24年度には32名のCVID患者を選定して、全エクソン解析を行った。患者は主に小児期発症、悪性腫瘍合併なし、自己免疫疾患を含む特徴的症状所見あり、の条件を満たすものとした。加えてできるだけTRECs, KRECs正常の症例とした。解析の結果、既知遺伝子異常による稀な表現型を呈する3疾患が明らかになった。前年度の2476遺伝子解析からの候補とあわせ、現在常染色体劣性遺伝子候補として50近くがあがり、また常染色体優性遺伝を呈する有力な候補遺伝子が数個抽出され、サンガー法での検証や、他患者での同遺伝子変異解析に着手している。 さらに家族歴を有する患者からの検体の収集にも着手した。少なくとも両親とのトリオ解析に向けてデータと良質の材料の確保に当たった。 (3)変異遺伝子産物の機能解析:上記解析の中でFANCA, BTK, STAT1などが既知遺伝子として同定されたが、表現型としては稀であり、血球減少や腸管異常、自己免疫などの症状を呈していた。それぞれの遺伝子については機能解析を実施し、(1)の体細胞超変異などを含め、CVIDの病態との関連について掘り下げた検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫学的情報データベースは拡充し、約120名の詳細なデータが蓄積した。免疫学的寛容破綻については、特にB細胞レセプター、T細胞レセプターのレパートアの偏りに注目したデータが集まりつつあり、サブセット異常やKRECs, TRECs値とあわせて自己免疫との関連に迫りつつ亜ある。候補遺伝子探索では32名で全エクソン解析が行われ、既知遺伝子の稀な表現型や、候補遺伝子が集積しつつある。今後その機能解析から免疫不全や自己免疫疾患との関連性にアプローチ可能になっている。
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今後の研究の推進方策 |
1.自己免疫症状を呈するCVIDの責任遺伝子同定:大半の症例では責任遺伝子が未同定なので、両親や同胞などでの全エクソン解析を加えつつ、加算減算を行うことで責任遺伝子同定を試みる。 2.変異遺伝子産物の機能解析:上記の新規・既知遺伝子変異に関しては、モデル細胞でのknock down(欠失型変異)や異常タンパク導入(hetero変異)で免疫異常を模倣する系を作成する。その細胞を用い、細胞内シグナル伝達、Ca流入、naïve B細胞からの分化などを検証する。最終年度に当たり、STAT1異常によるCVID表現型及び自己免疫疾患の発症機序を明らかにする。 また免疫寛容や免疫調節に関与する細胞群の構成や比率を明らかにし、それぞれでの遺伝子発現や生理活性物質産生を検討すると共に、正常組換えタンパクの導入で、機能が回復するかを検証する。 3.中枢性寛容・末梢性寛容破綻の分子機構解明に向けた新規検索法の開発と検証:本年度中にIgH領域のspectratyping法を確立し、またVH領域での体細胞超変異を次世代シークエンサで解析することにより、自己抗体を産生するCVIDでのB細胞受容体の偏りを明らかにする。これらによりCVIDでの自己免疫発症基盤を探索する。 4.単一遺伝子異常疾患の治療法の模索:2と連動しhetero変異を有し自己免疫症状を呈するものでは、野生型タンパク導入、あるいは阻害薬スクリーニングなどで、機能回復を試みる。
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