研究課題/領域番号 |
23390272
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
久保田 健夫 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (70293511)
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研究分担者 |
黒澤 尋 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (10225295)
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キーワード | 遺伝子 / ゲノム / 脳神経疾患 / 発現制御 / トランスレーショナルリサーチ |
研究概要 |
【具体的内容】平成23年度に実施した研究成果は以下の3点である。 1.iPS細胞の神経分化サンプルの作製[担当:黒澤]:PIポリアミドによる遺伝子特異的治療法開発研究の材料となる患者由来細胞を作製した。具体的には、対象疾患であるレット症候群の患者2名(いずれもMECP2に遺伝子変異(1塩基欠失)を有する)から採取した皮膚線維芽細胞より樹立したiPS細胞株を対象に、一次・二次の神経細胞塊を作製した。 2.レット症候群における神経病態関連遺伝子の確認解析[担当:久保田]:PIポリアミドによるエピゲノム修復標的とする本症候群の神経病態関連遺伝子(3種)の特性を確認した。具体的には、LIN7A(神経細胞表面NMDA受容体輸送因子)とPCDH7とPCDHB1(いずれも神経細胞接着因子)のMeCP2発現制御下特性(1)ヒト由来神経培養細胞(SH-SY5Y)またはマウス由来神経培養細胞(Neuro2A)でMeCP2過剰状態の際に発現が変化すること、(2)MeCP2が本遺伝子のプロモーター領域に結合すること」、を確認した(BMC Neurosci 2011に発表)。 3.PCDH遺伝子用の脱メチル化効果を有するPI-ポリアミドの作製[担当:久保田]:DNA配列特異的にエピゲノム修復を施すPI-ポリアミドの作製を開始した。具体的には、上記遺伝子のプロモーター領域への作用が予測できるN-メチルピロール(P)とN-メチルイミダゾール(I)配列をデザイン(設計)した。 【本研究の意義】「Rett症候群の神経病態に関わる遺伝子のエピゲノム状態を修復し、適正な遺伝発現状態に是正し、神経機能の回復を検証する」ことである。 【本研究の重要性】「栄養物質や薬物によるヒトゲノム(全遺伝子)を対象とした従来の修復方法に代わる、疾患に関連する遺伝子だけを標的とするエピゲノム修復方法を開発すること」である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピゲノム修復に基づく遺伝子特異的治療法の開発が本研究の目的である。初年度である平成23年度は、材料である対象患者由来のiPS神経分化細胞の作製と修復対象となる病態関連遺伝子の動態の確認を、初期の計画通り行うことができた。3番目の課題であった修復ツールとしてのPIポリアミドに関しては、配列設計までは終了したが、作製までは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、遅れている、PIポリアミドの作製を行い、これを用いた修復の可能性やその効率に関する検証を行う。 問題点として予測される点は、最も患者に近い細胞として作製した患者由来のiPS神経分化細胞が、神経細胞ゆえ、PIポリアミドの導入効率が低い可能性があることである。 この場合の対応策として、iPS神経分化細胞への効率をあげる検討作業と平行して、iPS細胞の代わりにヒト由来の神経培養細胞を用いて、計画している修復効率の検証を行う。
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