研究課題/領域番号 |
23390273
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 壯一 京都大学, 医学研究科, 教授 (10273450)
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キーワード | 難治性血液腫瘍 / アポトーシス / オートファジー / 新規予後因子 / 白血病幹細胞 |
研究概要 |
難治性血液腫瘍疾患の新規治療法の開発を目指し、(1)難治性白血病及び難治性固形腫瘍のin vivoにおける細胞死機序の検索(2)難治性白血病の新規予後因子の検索(3)急性骨髄性白血病(AML)の微少残存病変(MRD)分画における白血病幹細胞の同定と機能の検討、を行う。すでに我々は過去3年間の研究期間に、小児AMLの新規予後因子の発見及び難治性白血病や難治性固形腫瘍における新規分子標的療法薬による新規細胞死機序(オートファジー)の意義、について報告し、NOGマウス(免疫不全マウス)に急性白血病や固形腫瘍の患者検体を生着させ、機能を解析する系を確立した。また、日本小児白血病リンパ腫グループ(JPLSG)のAML委員長の責務から、AMLO5臨床試験の付随研究として、患者検体を使用した研究をすでに開始している。 本年度の各プロジェクトにおける成果は以下の通りである。 (1)分子標的療法薬であるdasatinibをPh1ALL細胞株を生着させたNOGマウスにin vivoで投与した系において、オートファジーが観察され、日本血液学会で口演発表した。(2)小児急性AMLの予後因子解析とし、AML-05プロトコール検体を用いて、CXCR4の発現量(低リスク群において、高発現群が予後不良)G-CSF受容体typeIVの発現量(低リスク群において高発現群の再発率上昇)t(8;21)症例におけるc-kit変異解析(N822Kが予後良好、D816Vが予後不良)MLL陽性例、FAB分類M7例等におけるEVI-1発現量を順調に解析終了した。成人AMLにおける新規予後不良因子DMNT3A変異解析を小児AML99検体で行い、論文報告した。(3)小児AML検体を用いてフローサイトメトリー法によるMRD検出システムの確立を行った。MRDは白血病細胞0.01%まで定量可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)難治性白血病の細胞死機序解析をin vivoにおいて解析可能なマウスモデルシステムの確立に成功し、すでに新規分子標的療法薬(dasatinib)におけるオートファジーの同定に成功し、学会発表を行った。(2)研究計画書に記載した予後因子解析については、すでに小児AML検体における解析を終了し、成人において報告された新規予後因子の解析も新たに行い、論文報告した。(3)フローサイトメトリーにおけるMRD検出システムの確立に成功し、今後、MRD分画の白血病細胞をin vivoで増殖させるシステムを確立する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Ph1陽性白血病患者検体(慢性骨髄性白血病の急性転化症例やPh1ALL症例)をin vivoで解析可能なマウスモデルシステムの確立に成功しており、今後、骨髄、脾臓、肝臓のみならず、中枢神経系についてもin vivoにおける細胞死の解析を行う。(2)AML-05臨床成績の解析を行い、すでに解析した予後因子との相関を検討することにより、次期臨床試験での解析継続及び、次次期臨床試験での層別化因子の是非を決定する。(3)de novo AMLのみならずダウン症候群に合併したAML(AML-DS)におけるフローサイトメトリーにおけるMRD検出システムの確立を行う。MRD分画における白血病幹細胞の同定と薬剤感受性試験を行う。
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