研究課題
自閉性障害(ASD)の病因遺伝子同定、病態解明と治療法の開発を目的に、患者での染色体・遺伝子解析、病因遺伝子の機能解析およびモデルマウス解析を継続して行った。(1) ASD患者での新たな病因遺伝子同定ASDおよび知的障害患者を対象に、Agilent社 Human CGHアレイ(180Kx4)を用いたアレーCGH解析、および候補遺伝子の変異解析を継続的に実施した。その結果、新たに疾患との関連性が示唆される染色体微細欠失/重複(CNV)および候補遺伝子変異を検出した。CNV領域に局在する遺伝子としてLIN7AおよびLIN7Bが同定された。また、候補遺伝子としてSHANK2等の変異が検出された。LIN7A/7Bは機能解析実施中であるが、それぞれシナプス前、後膜での局在や神経細胞の発生・分化に関与している結果が得られつつある。(2) ASD候補遺伝子であるG蛋白結合型受容体(GPCR)の解析これまでの患者解析等で我々が病因遺伝子として同定したGPCRである、GRR37およびGPR85の解析を行った。両遺伝子それぞれの変異を誘導した遺伝子を培養細胞に導入した結果、小胞体ストレスの増加と細胞死の促進が確認された。また、GPR85変異を導入したマウス脳の解析で、シナプスでのGABA/glutamate受容体の発現バランスが変化していた。これらのことから、両遺伝子がASDの発症に関与すると考えられた。また、機能的にASDとの関連が示唆されているセクレチン受容体遺伝子に関して、患者での変異解析を行い、ミスセンス変異を複数検出した。これらの変異と疾患との関連を解析中である。さらに、セクレチン投与により脳内で発現が変化する遺伝子を複数検出した。これらのASDとの関連を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
aCGHによるCNV解析、候補遺伝子変異解析に関しては、順調に解析症例を積み重ねており、新たな病因遺伝子も複数同定され、それらの遺伝子の機能解析も進展している。結果を複数の論文にまとめている途中であり、順調に進行している。また、治療ターゲットとなり得るシナプス病態の解析研究も進展しており、モデル動物に対する薬物投与による変化も解析されて、発現が変化する分子も検出されており、それらの中で、ASDに共通する治療ターゲットとなる候補分子の同定研究も進行している。治療介入による行動解析は若干遅れている。
全体的には順調に伸展しており、現状で進行出来れば、一定の成果を得られると考えられる。マウスの治療介入における行動解析は、自治医科大学神経生理学との共同研究も進めていく予定である。
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