研究課題/領域番号 |
23390276
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 孝雄 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80171495)
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研究分担者 |
小崎 健次郎 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (30234743)
三橋 隆行 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (80338110)
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キーワード | 神経発生 / 細胞周期 / 大脳皮質 / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究ではエピジェネティクス機構、特にクロマチン構造を制御するヒストン脱アセチル化酵素が、大脳皮質を構築する神経前駆細胞の細胞周期調節機構に果たす役割を解明する。具体的にはピストン脱アセチル化酵素を神経前駆細胞特異的に、かつ発生時期特異的に強制発現させることのできるマウスを作成、ピストン脱アセチル化酵素Sir2強制発現により神経前駆細胞に惹起される細胞分裂動態の変動と、結果として大脳皮質の組織学的構築に生じる異常を解析する。 本年度は、A.神経前駆細胞特異的にテトラサイクリン強制発現システムの調節タンパク質rtTAを発現するトランスジェニックマウス(nestin-rtTA)と、B.rtTAとドキ-シサイクリン存在下でSir2蛋白質を発現可能なTRE-5i72トランスジェニックマウスとを交配し、以下の実験を行った。 (1)両遺伝子を持つダブルトランスジェニックマウス胎仔を孕む母マウスに、ドキシサイクリンと対照としてのリン酸緩衝生理食塩水を胎生14日午前9時より12時間おきに経口投与した。胎生16日目のマウス胎児において神経前駆細胞の細胞周期長の変化をS期特異的トレーサーBrdUによるCumulative Labeling法で解析した。Sir2を強制発現した場合対照群と比較して細胞周期のG1期が約13%短縮し、一方細胞周期の全体の長さは5.7%の変動にとどまることを明らかにした。 (2)神経前駆細胞の分化誘導の確率(Q値)をS期特異的トレーサーであるIdUとBrdUによる2時間コホート法で解析した。Sir2を強制発現した場合対照群と比較してQ値が約15%減少することを明らかにした。 以上から、Sir2が神経前駆細胞の細胞分裂動態に重要な役割を持つこと、さらに神経前駆細胞の細胞周期長の調節に重要な緩衝作用があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した二つの実験を予定通り完了し、研究成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も研究実施計画に則り着実に研究を実施する。実験をさらに効率的かつ客観的に進めるうえで、研究支援者の雇用を検討する。
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