ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス(EOS)は,細胞内のパターン認識受容体の1つであるNOD2遺伝子の変異を基盤とし,明らかな外因性因子の存在なしに肉芽種を来す疾患である。アミノ酸置換を伴う遺伝子変異の結果として,NOD2がリガンドによって活性化された時と同じ機序で肉芽腫を形成すると考えられるものの,NOD2の活性化によって肉芽腫を形成する詳細なメカニズムは解明されていない。本研究では,ブラウ症候群/ EOSをモデルに,細胞生物学的あるいは分子生物学的な手法から肉芽腫形成のメカニズムの解明を目指し,肉芽腫の病態解明へと発展させることを目的とした。 同意を取得後,NOD2変異を有する患者より末梢血を採取し,磁気ビーズを用いてCD14陽性細胞へと単離,発現する遺伝子の網羅解析を行った。しかしながら,予想に反して,in vitroで細胞株にNOD2を過剰発現させた時に確認される差違は,実際には患者末梢血から抽出した資料からは同定できなかった。その要因の1つとしてNOD2の発現そのものが患者末梢血から抽出したCD14陽性細胞においては,定常状態では見られないことが明らかとなった。このため, NOD2の発現を誘導する条件の検討を行い,ビタミンD3を添加して培養を行うことで,例えば抗菌ペプチドなどと共にNOD2遺伝子の発現が増強することが確認された。しかしながら,この培養条件においても,細胞株にNOD2を過剰発現させた時に確認される様なNF-κBの転写亢進を示唆する炎症性サイトカインなどの発現を確認することができなかった。このため,解析対象となる細胞を変更し,遺伝子変異をもった患者からiPS細胞の樹立に着手するとともに,遺伝子導入をした単球系細胞株において発現する遺伝子の網羅解析を行う研究に着手し,現在この解析を継続中である。
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