本研究課題は、炎症遷延化の一因にリンパ管新生とリンパ管機能の破綻があることを同定した。さらに、血管新生因子vascular endothelial growth factor (VEGF)-Aに着目することにより、リンパ管機能の破綻に関わる分子機構の一端を解明した。従来、血管透過性の持続的亢進は、慢性炎症の原因となる。さらに、血管の下流にはリンパ管があり、組織液を回収べく機能している。しかし、慢性炎症におけるリンパ管機能に着目した研究は乏しい。そこで本研究課題は、①毛細リンパ管に特異的に発現する分子LYVE-1に着目し、リンパ管吸収能に関わる生理的役割を見出し、②炎症性サイトカインVEGF-Aが、LYVE-1のectodomain sheddingを誘導する分子機構を同定し、③リンパ管新生に関わるex vivo及びin vivoモデルを構築し、LYVE-1 sheddingがリンパ管吸収能の低下に繋がることを示した。この結果、shedding阻害薬がリンパ管機能を回復し、皮膚の慢性炎症を軽減する可能性を見出した。本研究課題は、学術専門誌に投稿したり、国内外の学会で研究成果を発表した。学会発表では、LYVE-1の機能をプロセシングに基づき検討する本申請課題は世界的にも類がなく、斬新であるとの評価を得た。本研究成果は、慢性炎症で破綻するリンパ管機能を示し、尋常性乾癬や癌リンパ行性転移など疾病克服の基盤となり、広く社会に役立つものである。
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