研究課題/領域番号 |
23390284
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉岡 充弘 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (40182729)
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研究分担者 |
大村 優 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (80597659)
泉 剛 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60312360)
吉田 隆行 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60374229)
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キーワード | 精神薬理学 |
研究概要 |
児童虐待が成人後の精神疾患発症のリスク・ファクターになることが知られており、そのメカニズムの解明と治療法の開発が急務である。これまで我々は生後3週齢の幼若期ラットにストレスを負荷すると中脳の縫線核5-HT/GABA共存細胞数が減少し、成熟期に異常行動が出現することを明らかにしてきた。本研究の目的は、GABA合成酵素であるglutamic acid decarboxylase (GAD)のプロモーター領域メチル化に焦点を当て、幼若期ストレスが縫線核5-HT/GABA共存細胞数を減少させ、異常行動を出現させる原因を追究することにある。しかし、我々のこれまでの知見を発表、論文投稿をした際に、1)我々が用いた細胞数をカウントする手法はやや定量性に乏しい、2)行動学的検討が不十分で行動異常に対する解釈が難解である、という批判を受けた。これらは我々の仮説の出発点となるものであるから、我々はまずこれらの批判に答え、研究の足場を固めることにした。具体的には幼若期ストレスを負荷したラットのうつ様行動を調べ、その後脳を摘出し、背側縫線核および正中縫線核のTPH2、GAD67のタンパク量を定量の高い方法であるウェスタンブロッティング法を用いて調べた。我々の仮説ではTPH2, GAD遺伝子プロモーターのメチル化を想定しているが、そもそもこれらの酵素のタンパク量が幼若期ストレスによって減少することを確認する必要があるため、5-HT, GABAそのものではなく、それらの合成酵素を対象とした実験を行った。その結果、幼若期ストレスは無力感を増大させるが、無快感症には影響しなかった。ウェスタンブロッティング法の立ち上げにも成功し、選択性の高い抗体の入手にも成功した。現在幼若期ストレス負荷ラットのTPH2, GAD67タンパク量測定を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度はDNAメチル化を測定する技術を確立することを当初予定していたが、上記のようにこれまでの研究結果を多角的に再検証する必要があったため、当初の予定を先送りにした。しかし、変更・追加された研究は順調に進み、良い結果を得ることができた。このように、当初とは変更された計画は順調に進展したが、当初の予定を含む形にまでは進行できなかったため、やや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は幼若期ストレス負荷ラットのTPH2, GAD67タンパク量測定を完了させる。仮説通りTPH2もしくはGAD67タンパク量の減少が確認された場合、減少が確認されたタンパクの遺伝子のプロモーター領域におけるメチル化の測定を行う。さらにメチル化の増加が確認された場合、DNAメチル化阻害剤を投与することにより幼若期ストレスに起因する行動学的、組織学的、神経化学的変化が改善されるかどうかを検証する。
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