研究課題/領域番号 |
23390284
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉岡 充弘 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40182729)
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研究分担者 |
泉 剛 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60312360)
吉田 隆行 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60374229)
大村 優 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80597659)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 幼若期ストレス |
研究概要 |
児童虐待が成人後の精神疾患発症のリスク・ファクターになることが知られており、そのメカニズムの解明と治療法の開発が急務である。これまで我々は生後3週齢の幼若期ラットにストレスを負荷すると中脳の縫線核5-HT/GABA共存細胞数が減少し、成熟期に異常行動が出現することを明らかにしてきた。本研究の目的は、GABA合成酵素であるglutamic acid decarboxylase(GAD)のプロモーター領域メチル化に焦点を当て、幼若期ストレスが縫線核5-HT/GABA共存細胞数を減少させ、異常行動を出現させる原因を追究することにある。 まず、我々は幼若期ストレスが成熟後の無力感を増大させることを繰り返し確認することに成功した。しかし、幼若期ストレスが背側縫線核もしくは正中縫線核のDNAメチル化を引き起こしたことがこの無力感増大の原因であるとすれば、DNAメチルトランスフェラーゼの発現が縫線核で上昇しているはずである。特に我々のこれまでの研究からは正中縫線核での異常が予測される。そこで我々はDNAメチル化を維持するために必須のDNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)のmRNA発現を定量PCR法を用いて調べた。正中縫線核で測定した結果、幼若期ストレスを負荷された群のDNMT1のmRNA発現量はコントロール群と比較して有意な差は無かった。つまり、当初の予測とは異なり、正中縫線核でのDNAメチル化が上記の無力感増大に関与している可能性は低い。今後は背側縫線核でのDNMT1 mRNA発現レベルを測定し、幼若期ストレスによる無力感増大の原因を探っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度はDNAメチル化を複数の脳部位で測定することを当初予定していた。しかし、上記のように最も仮説の中心となる脳部位での測定で予測と異なる結果が得られたため、他の脳領域での測定を一旦停止し、仮説を再度立て直している。そのため、やや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予測とは異なり、正中縫線核でのDNAメチル化が上記の無力感増大に関与している可能性は低いことが示された。今後は背側縫線核でのDNMT1 mRNA発現レベルを測定し、幼若期ストレスによる無力感増大の原因を探っていく。ここでもDNMT1 mRNA発現レベルに変化が無い場合は、細胞死、樹上突起のスパイン数減少など、DNAメチル化以外の可能性を探っていく。
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