研究課題
2人の統合失調症患者の末梢血由来のゲノムDNAを用いて、エクソーム解析を行った。その結果、遺伝子機能に影響を与える多くの変異を同定した。統合失調症は多因子性疾患であるため、多くのゲノム変異が発症に寄与している可能性があるため、変異を機能的にグルーピングする必要がある。そこで統合失調症の病態に関わっているグルタミン酸シグナル伝達に影響を与える変異を中心に解析を行った。その結果、ひとつの統合失調症の病態の深く関わっていることが知られている遺伝子のナンセンス変異を同定し、この変異がそれを有している患者の統合失調症の発症に大きく関わっていることが推測された。一方、グルタミン酸受容体機能に関わっている遺伝子のうち、SLC1A1遺伝子内のSNPsが統合失調症と関連していることを発見し、最も関連が強かったのはrs7022369であった。このSNPのリスクアレルがヒト死後脳の前頭前野解析によりSLC1A1遺伝子発現レベルが高いことと関連していることが分かった。しかし、エクソーム解析ではSLC1A1遺伝子の機能変化を予測させる変異は検出されなかった。本研究により、SLC1A1遺伝子多型が統合失調症の疾患感受性に関与する可能性を示唆し、統合失調症のグルタミン酸病態仮説に関わるものであると推測された。しかし、この結論には他の集団での確認と共に、頻度は低くても統合失調症に対する強いリスクを持った変異を同定するなどSLC1A1遺伝子と統合失調症との関連に関するより強い証拠が必要である。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーの立ち上げにやや時間がかかり、解析したサンプル数が少数にとどまっている。一方、関連解析や遅発性ジスキネジアに関しては順調に論文として発表することができた。
最大のハードルである次世代シークエンサーによる解析が軌道に乗ったので今後はサンプル数を増やすことにより、目的を達成できるものと予想される。
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