研究課題
統合失調症の発症には遺伝要因が大きく関係する。統合失調症の発症に関連するゲノムの多様性や変異は民族間で共通の頻度の高いものでは影響力は小さく、比較的頻度の低い、あるいは、民族特異的な変異が比較的強い影響力を持っていることが知られつつある。本研究は全ゲノム関連解析を通じて、頻度の低い、日本人あるいは東アジア人特有の変異を持つ可能性のある候補遺伝子の解析と次世代シークエンサーを利用して統合失調症に関連するゲノム変異の特徴を明らかにすることにより、患者の全ゲノム情報をさらに有効に診断・治療に利用する方法を開発することを目的とする。本年度は対象疾患を統合失調症と遅発性ジスキネジアとして、すでに終了しているGWASデータと本研究で遂行するプールしたサンプルによる解析により日本人に特異的に見られる頻度の低い変異のうち、統合失調症と関連する変異を検出し、replication解析を行った。その結果、DPP6遺伝子が新たな遅発性ジスキネジアの関連遺伝子であり、DPP6が発現低下することが遅発性ジスキネジアのリスクになることを解明した。さらに、ニューロンで発現しているグルタミン酸トランスポーターであるSLC1A1遺伝子にある東アジア人特異的なコピー数変異が統合失調症に関連することを見出した。このコピー数減少はSLC1A1遺伝子の発現上昇と関連しており、民族特異的な統合失調症のリスク因子と考えられた。そこで、サンプル数をさらに増やして計4000人のサンプルで検討したところ、このコピー数変異は統合失調症と関連せず、むしろ、このコピー数変異と連鎖不平衡にある一塩基多型が統合失調症と関連することがわかった。
3: やや遅れている
次世代シークエンサーによる解析数が当初予定したよりも少なく、解析を遂行できるサンプル数に至っていない。
次世代シークエンサーにより、ケース・コントロールデザインでエクソーム解析を行い、統合失調症と関連する変異の特徴を明らかにし、多因子遺伝性疾患の次世代シークエンサー解析の一手法を提示する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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