研究課題/領域番号 |
23390286
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究分野 |
精神神経科学
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533)
|
研究分担者 |
三國 雅彦 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00125353)
上原 徹 群馬大学, 健康支援総合センター, 准教授 (60303145)
成田 耕介 群馬大学, 医学部, 講師 (70345677)
亀山 正樹 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00455982)
武井 雄一 群馬大学, 医学部, 助教 (30455985)
|
キーワード | NIRS / 精神疾患 / 生活障害 / 脳機能画像 / real-world |
研究概要 |
会話を行っている2名の脳機能を同時に測定し、その関係を検討した。初対面の被検者ペア7組について、15秒交代の180秒間の会話課題(15秒条件)と、そうした制約のない自由な会話(自由条件)の2課題を実施し、その最中の脳活動をNIRSで検討した。 いずれの課題においても、前頭部から側頭部にかけての広い範囲で賦活が認められたが、自由会話では180秒の課題区間の後半で賦活が小さくなっていくのに対して、制約会話ではそうした傾向が目立たたなかった。これは、制約会話において15秒交代という不自然な会話を継続するために、意識的な努力を必要としたことを反映した結果と考えられた。 会話を行った2名のペアの脳賦活の関係を波形相関として検討すると、15秒条件では広い範囲で正の相関を認めたのに対して、自由条件ではそうした正の相関のなかで右半球の背外側前頭前野では相関は負であった。制約会話における広い範囲の正の相関は、不自然な会話を継続するために2名の被検者の脳賦活が同期していたことを示唆すると考えられる。これに対して自由会話での負の相関は、場の雰囲気にもとついて自然に話し手と聞き手という役割分担とその交代ができたこと、そうした場の雰囲気や役割分担を右背外側前頭前野が担っていることを示唆すると考えらえられた。 このようにして、自然な姿勢で会話を行っている最中の脳活動を捉え、しかも2名の脳機能の関連を検討することで、対人関係の脳機能を明らかにすることができることが示唆された。精神疾患の診断や治療にこの方法を応用できる可能性を検討していくことを予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fMRIを代表とする脳機能画像研究は意識のある状態における脳機能を検討できる点で画期的であったが、いっぽうで一人の被検者が臥位となり無動の状態でないと検査ができないという制約がある。NIRSの方法論の特徴を生かすことでこうした制約を越えて、自然な状態において会話を行っている2名の被検者の脳機能を同時に測定し、しかもそうして得られたデータについて解析法を確立した点で、順調な研究成果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
9.および11.で述べたように、現在のところ健常者について会話を行っている際の脳機能を2名同時に測定する方法論を確立した。この方法を洗練させるとともに、今後は統合失調症・うつ病・双極性障害・広汎性発達障害についてもNIRSデータの測定は行っていく。さらに、会話のみならずより日常生活に近い状況でのNIRS検査が可能であるかどうかの検討を行っていく。その結果にもとついて、精神疾患において認められる生活障害について精神疾患に広く認められる共通する脳機能病態と、疾患特異的に認められる脳機能病態の両者を明らかにし、それらを臨床的な診断と治療へと応用する具体的な手段について検討を進めていく。
|