研究課題/領域番号 |
23390286
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
福田 正人 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20221533)
|
研究分担者 |
高橋 啓介 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20455984)
武井 雄一 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30455985)
成田 耕介 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (70345677)
青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351)
須田 真史 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30553747)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 脳・神経 / 脳神経疾患 |
研究概要 |
Real-world脳機能画像研究として、会話を行っている2名の脳機能を同時に測定し、その関係を検討した。初対面の被検者ペアについて、15秒交代の180秒間の会話課題を実施し、その最中の脳活動をNIRSで検討した。この方法を用いてこれまで健常者については、the Temperament and Character Inventory (TCI)で評価した性格(協調性cooperativenss)が前頭部における脳賦活と負の相関を、自閉症傾向autism quotient (AQ)が左側頭部の脳賦活と正の相関を、the State-Trait Anxiety Inventory (STAI)で評価した不安特性が前頭部の脳賦活と負の相関を示すことを明らかにしてきた。 これらと同じ課題を用いて統合失調症について検討を行ったところ、左側頭部の脳賦活は陽性陰性症状評価尺度the Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS)で評価した不統合症状と負の相関を、右下前頭部の脳賦活はPANSSの陰性症状や不統合症状および罹病期間と負の相関を示した。このようにして、統合失調症において臨床的に認められる不統合症状や陰性症状の背景に対人場面における自己制御の障害が示唆されることを、NIRSを用いて会話における脳機能を検討することで明らかにすることができた。 以上より、人間の脳機能として対人場面における自己制御を検討することの重要性を明らかにすることができ、研究として実験場面で脳機能を検討することの枠を越えて、より現実に近い実生活場面における脳機能を検討することの必要性(real-world neuroimaging)、人間が一人ではなく対人行動を行っている最中の脳機能を検討することの重要性(two-brain neuroscience)を示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fMRIを代表とする脳機能画像研究は意識のある状態における脳機能を検討できる点で画期的であったが、いっぽうで一人の被検者が臥位となり無動の状態でないと検査ができないという制約がある。NIRSの方法論の特徴を生かすことでこうした制約を越えて、自然な状態において会話を行っている被検者の脳機能を測定する方法論を確立し、それを精神疾患のひとつである統合失調症に適応することで、統合失調症の生活障害と関連する脳機能の特徴を明らかにすることができた点で、順調な研究成果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は精神疾患のひとつである統合失調症を対象に、会話を行っている際の脳機能を測定して有用な結果を得ることができたので、今後は対象をうつ病・双極性障害・広汎性発達障害に拡大することを予定している。さらに、初対面の相手との会話のみならず、家族や友人や医療者との会話などより日常生活に近い状況でのNIRS検査が可能であるかどうかの検討を行っていく。その結果にもとづいて、精神疾患において認められる生活障害について精神疾患に広く認められる共通する脳機能病態と、疾患特異的に認められる脳機能病態の両者を明らかにし、それらを臨床的な診断と治療へと応用する具体的な手段について検討を進めていく。
|