研究課題/領域番号 |
23390297
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡村 信行 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40361076)
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キーワード | 痴呆 / 神経科学 / 放射線 / 脳神経疾患 / 老化 |
研究概要 |
アルツハイマー病(AD)の二大脳病理像である老人斑・神経原線維変化の形成量を個別に計測できれば、ADの早期診断や薬効評価系として活用できる。昨年までに、キノリン誘導体THK-523をタウイメージング用PETプローブの候補化合物として開発し、同化合物がタウ蛋白に選択的に結合することを報告した。だがその臨床応用にあたっては、化合物の結合性および動態面でのさらなる改良が必要と考えられた。そこで我々は最適化化合物THK-5105、THK-5117を新たに開発し、本年度は有力候補化合物であるTHK-5105のタウイメージング用PETプローブとしての適性を評価した。まずTHK-5105の^<18>F標識体を用いて同化合物の結合親和性を評価したところ、Aβ(Kd=35.9nM)よりもタウ蛋白(Kd=1.45nM)に対して高い結合親和性を示した。また同化合物溶液をAD患者海馬脳切片に滴下したところ、神経原線維変化やneuropil threadなどのタウ病変の染色性は良好であった。さらにAD脳切片のオートラジオグラフィーを実施した結果、[^<18>F]THK_5105は[^<18>F]THK-523よりもコントラストよく、タウ蛋白病変を描出した。マウスにおける静注投与試験では、高い脳血液関門透過性とTHK-523を上回る速やかなクリアランス特性を示した。そこでタウトランスジェニック(Tg)マウスに[^<18>F]THK-5105を静脈内投与し、小動物用PETを用いて脳病変の撮像を試みた。その結果、タウTgマウスでは野生型マウスよりも脳への高いトレーサー集積が確認され、THK-5105がin vivoでタウ蛋白に結合することが証明された。[^<18>F]THK-5105は毒性試験でも十分な安全性が確認されており、平成24年度から同プローブを用いた臨床研究を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では平成23年度中に候補プローブの探索的臨床評価を開始する予定であったが、東日本大震災により臨床PET研究の拠点である東北大学サイクロトロンRIセンターが被災し、PET研究およびポジトロン標識体を用いた基礎実験の施行が困難となったため、研究計画が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
^<18>F標識プローブの試験合成の後、今秋よりfrst clinical studyを東北大学サイクロトロンRIセンターにおいて実施する。臨床評価のスピードを加速させるため、同プローブを用いた臨床評価を海外(オーストラリア・メルボルン大学)においても並行して実施する計画である。THK-5105の臨床評価の結果によっては、さらなる改良が要求される可能性も否定できないため、タウイメージング用PETプローブの新規探索と最適化作業は昨年度に引き続き継続する。
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