研究課題/領域番号 |
23390297
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡村 信行 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40361076)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 痴呆 / 神経科学 / 放射線 / 脳神経疾患 / 老化 |
研究概要 |
アルツハイマー病の二大脳病理像である老人斑・神経原線維変化の形成量を個別に計測できれば、アルツハイマー病の早期診断や薬効評価に活用できる。本年度から、独自に開発したタウイメージング用PETプローブ[18F]THK-5105を用いた臨床研究を共同研究先である豪州メルボルン大学で実施した。アルツハイマー病患者2名と健常高齢者4名に[18F]THK-5105を投与し、投与後120分までの頭部のPET画像を撮像した。その結果、アルツハイマー病患者のPET画像で、タウ蛋白病理像の好発する下部側頭葉や海馬で本トレーサーの高度な集積がみられたが、健常高齢者では同領域にトレーサー集積を認めなかった。またアルツハイマー病患者における[18F]THK-5105の脳内集積パターンは、[11C]PiBの集積とは大きく異なっていた。この結果から、[18F]THK-5105はアミロイドβ蛋白は検出せず、タウ蛋白病理像を選択的に検出している可能性が示唆された。[18F]THK-5105の問題点は正常脳組織からのクリアランスが[11C]PiBよりも遅い点にあり、動態面でのさらなる改良が必要と考えられた。そこでもう一つのプローブ有力候補である[18F]THK-5117について、タウイメージング用PETプローブとしての適性を評価した。まずTHK-5117の18F標識体を用いて同化合物の結合親和性を評価したところ、タウ蛋白線維に対して高い結合親和性を示した。またアルツハイマー病患者脳切片において、神経原線維変化やneuropil threadなどのタウ病変を選択的に描出した。マウスにおける静注投与試験では、高い脳移行性に加えて、[18F]THK-5105を上回る速やかなクリアランス特性を示した。そこで平成25年度は[18F]THK-5117を用いた探索的臨床研究を東北大学で実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画よりも東北大学で実施する臨床研究の開始がやや遅延しているが、海外の共同研究施設(オーストラリア・メルボルン大学)において、内容的には期待通りの成果が得られている。世界に先駆けて、アルツハイマー病患者におけるタウイメージングを実用化した意義は大きいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度より[18F]THK-5117の臨床研究を東北大学サイクロトロンRIセンターで実施する。現在、臨床研究の開始へ向けて、学内倫理委員会への提出準備を進めている。同一プローブを用いた臨床研究は、放射性医学総合研究所においても実施される予定である。これらの臨床研究で優れた成果が得られれば、国内外の他の臨床施設にも化合物および前駆体を積極的に提供し、臨床研究の規模を拡大する予定である。PET検査を実施した症例の縦断的追跡も予定している。本臨床研究の結果によっては、さらなるプローブの改良が要求される可能性も否定できない。そこでタウイメージング用PETプローブのさらなる探索と最適化作業を、今後も継続する予定である。
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