研究課題/領域番号 |
23390300
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
手島 昭樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40136049)
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研究分担者 |
松浦 成昭 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70190402)
村上 昌雄 神戸大学, 医学系研究科, 教授 (50210018)
出水 祐介 神戸大学, 医学系研究科, 医学研究員 (50452496)
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キーワード | 放射線腫瘍学 / 細胞動態解析 / がん / 転移 / 浸潤能 / 炭素イオン線 / 陽子線 / 細胞運動 |
研究概要 |
本年度は種々の放射線照射後のRhoAおよびその下流に存在するMLC (Myosin Light Chain)の発現と活性化について解析した。さらに、放射線照射量と細胞運動の関係を調べる為、細胞運動の方向性と関連するゴルジ体の局在変化について検討した。一方、陽子線照射後の細胞遊走能、浸潤能をX線、炭素イオン線の結果と比較検討した。 1.転移関連遺伝子・タンパク質の発現量:ヒト膵がん細胞株AsPC-1、Panc1に炭素イオン線を照射し、RhoAおよびMLCの活性化を解析した結果、X線照射に比べ、RhoA、MLCの活性低下が示された。また、ヒト肺腺癌細胞株A549にX線を照射後、細胞運動に関連するゴルジ体の局在を検討したところ、低線量のX線照射された細胞は、非照射細胞、高線量照射細胞に比べ、短時間でゴルジ体が運動の方向性を決定した。結果、低線量照射された細胞は、他の条件に比べて細胞運動が亢進し、低線量X線照射が、細胞遊走・浸潤能亢進の一因となる可能性が示された。 2.細胞機能実験と解析:ヒト肺腺癌細胞株A549、血管内皮様細胞株ECV304に対し、陽子線照射後、細胞遊走能、浸潤能を検討し、X線、炭素イオン線と比較した結果、低線量照射された細胞では、X線照射細胞同様、細胞遊走・浸潤能が亢進し、高線量では、炭素イオン線照射細胞同様、遊走・浸潤能が抑制された。これにより、陽子線が細胞運動へ与える影響は、低線量と高線量で異なる可能性が示唆された。 以上より、種々の放射線照射によって生じる細胞運動に与える影響の違いを明らかにし、がんの転移、浸潤の分子メカニズムの解明へと進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった3種の放射線が細胞運動に与える影響を細胞機能実験と解析で明らかにしており、さらにその一因となるタンパク質としてRhoAおよびその下流にあるMLCが粒子線で活性低下することを明らかにした。また、低線量X線で細胞運動が亢進する一因としてゴルジ体の局在変化が関与する可能性を示しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
着目した遺伝子・タンパクについて、分子を遺伝子レベル、タンパクレベルで阻害し、転移能への影響を細胞実験にて確かめる。遺伝子レベルの阻害にはsiRNA、タンパクレベルの阻害にはinhibitorを用いる。in vivo実験においても、着目した遺伝子をノックアウトさせた細胞をマウスへ皮下注射したxenogrftを用いて転移能への影響を検討し、in vitroとの整合性を分析する。引き続き、生物学的データを集約し研究結果をデータベース化する。データベースは、実験の再現性を高める指標となる一方、統計解析ソフトSASを用いて、遺伝子、タンパク発現量、細胞機能、in vivo実験結果の相関関係を解析して、線質や線量の違いによる転移への影響を明らかにする。
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