研究課題
多くの腫瘍において、次々にがん幹細胞が同定されてきた。がん幹細胞は正常幹細胞と同様に自己複製能と多分化能を有し、がん幹細胞集団を維持しつつ、がん組織を構成する多様な分化段階にあるすべてのがん細胞を生みだすと考えられている。さらに、通常の薬剤・放射線治療ではがん細胞が消滅しても、がん幹細胞自体は消滅せず、「根」として残り、がんの再発の原因と考えられている。最近がん幹細胞が温熱感受性であることを示唆する注目すべき報告がなされた。そこで本研究ではハイパーサーミアによる治療効果向上のため、温熱によるがん幹細胞活性化抑制機構の解明を目的としている。今回は腫瘍の非がん幹細胞集団と比べて、がん幹細胞様細胞集団の温熱感受性を確かめた。実験にはヒト舌がんSAS細胞にX線2Gy/dayを1139日照射しても生存したX線抵抗性SAS-R細胞を用いた。細胞表面抗原(CD44,CD326)に基づくフローサイトメーターによる分画によって、がん幹細胞と非がん幹細胞集団の分離を試み、細胞死の判定を行った。まず、SAS細胞に比べて、X線抵抗性SAS-R細胞の方が、がん幹様細胞集団が多いことを明らかにした。また、X線照射48時間後、非照射に比べてがん幹様細胞集団が多く残ることを明らかにした。一方、温熱処理後、がん幹細胞様集団が残りにくいことを明らかにした。これらのことから、温熱はX線抵抗性ながん幹細胞集団に対しても、高い殺細胞効果を示すことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
所属機関所有の実験機器の性能によって、SP細胞の分画など実施ができなかったものもあるが、おおむね計画どおりに進捗している。
ヒト培養細胞株を特異的マーカーによってがん幹細胞様細胞集団と非がん幹細胞集団を分画して、温熱耐性および温熱誘導DSB生成量と修復能を調べる.
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