研究課題
がんの根治において、がん幹細胞が注目されている。様々な実験結果から、がん幹細胞様細胞はX線抵抗性であることが報告されている。一方、がん幹細胞が温熱感受性であることを示唆する注目すべき報告がなされた。そこで本研究ではこの現象を確かめることを目的とした。X線1日2 Gy(総線量2,278 Gy)の分割照射を続けても生存・増殖し続けたヒト舌扁平上皮がんSAS-R細胞とその親株SAS細胞を用い、温熱処理(44℃)した。対照にX線照射した。細胞の放射線感受性はHigh density survival assayで調べた。DNAの二本鎖切断量はヒストンγH2AXを指標としてフローサイトメーター(FACSCalibur, BD)を用いて調べた。がん幹細胞様集団頻度はがん幹細胞特異的マーカーCD44およびCD326による蛍光染色後、フローサイトメーターを用いて調べた。その結果、X線の20%生存率線量はSAS細胞で7.5 Gy、SAS-R細胞で12 Gy、温熱の20%生存率処理時間はSAS細胞で30分、SAS-R細胞で35分を示した。SAS細胞と比べてSAS-R細胞はがん幹細胞マーカー陽性の集団が多かった。SAS-R細胞はSAS細胞と比べてγH2AXはX線照射後早期に消失するが、温熱処理後に差は少ないこと、また、等生存率あたり放射線と比べて温熱によるDSB生成量は少ないが、DNA修復量も少ないことを確認した。いずれの細胞でも線量依存的にX線照射48時間後のがん幹細胞マーカー陽性の集団が増えていくのに対して、等生存率の温熱処理48時間後ではがん幹細胞マーカー陽性集団の増加は抑制されていた。温熱はがん幹細胞様細胞にも殺効果があり、X線抵抗性ながん細胞に対しても有効であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に進展している。
がん幹細胞特異的マーカーによるがん幹細胞様細胞集団と非がん幹細胞集団を分画後、温熱感受性ならびに温熱耐性と温熱誘導DSB生成量と修復能について明らかにしていきたい。
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