研究課題
がんの根治において、休眠状態のがん幹細胞が注目されている。がん幹細胞様細胞はX線によるDNA二本鎖切断(DSB)に対して、DNA修復能が高まっており、X線抵抗性を示すことが報告されている。一方、がん幹細胞様細胞は温熱感受性であることを示唆する注目すべき報告がなされた。これまでに我々は、温熱感受性の主要因はDSBであることを提唱してきた。休眠期では相同組換え(HR)修復ははたらかず、非相同末端結合(NHEJ)修復のみはたらくことから、もし、温熱でNHEJ修復が阻害されているとしたら、がん幹細胞がX線には抵抗性なのに対して、温熱に感受性であることを説明することができると考えた。今回、ヒト非小細胞肺がん細胞H1299を用い、HR修復阻害剤(Rad51阻害剤: B02)およびNHEJ修復阻害剤(DNA-PK阻害剤: NU7026)による温熱増感効果をコロニー形成法で調べた。その結果、X線に対して増感効果の認められるNU7026の濃度においても、温熱の増感効果は認められなかった。一方、B02単独では細胞致死に影響のない濃度で、温熱の増感効果が高まることを明らかにした。これまでに我々が見出してきたHR修復関連遺伝子が欠損または変異した細胞がそれぞれの親株細胞に比べて温熱に感受性であるのに対して、NHEJ修復関連遺伝子が欠損または変異した細胞では親株細胞と温熱感受性に違いが認められないこととを支持する結果が得られた。以上のことから温熱でDNA二本鎖切断が生じ、がん細胞に対してHR修復の阻害剤は温熱感受性を高める増感剤候補になることが示唆された。さらに、温熱処理によりNHEJ修復がはたらかないことが、がん幹細胞様細胞が温熱感受性となる一要因として示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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