研究概要 |
1)放射線感受性,遺伝子発現と幹細胞との関係を明らかにする目的で,p53野生型の上衣芽腫,p53変異型の膠芽腫をヌードマウス皮下に移植して,X線,炭素イオン線(290MeV/u, 6 cm-SOBP, NIRS),1Gy, 2Gy, 8Gy, 16Gy, 24Gyの1回照射をおこない,4,6,24時間後に腫瘍を摘出して,RNAを抽出してcDNAアレイ解析,階層型クラスタリング,Gene Ontology解析,Pathway解析,リアルタイムPCRを実施した。さらにフォルマリン固定,パラフィン包埋切片でH.E.染色による病理組織学的検討、アポトーシス誘発の頻度の検討を行った。これまでの解析で, p53変異型の膠芽腫においては,2Gy照射後6時間における遺伝子発現は非照射対照群とほぼ同様で変動が乏しかったが,8Gyおよび16Gy照射群では,4~6時間後,さらに24時間後に遺伝子発現の変動(上昇,低下)がみられ,特に炭素イオン線16Gy照射後で最も明瞭で,しかもX線と炭素イオンでは多少異なる傾向も認めた。p53野生型の上衣芽腫では,p53, Bax, Fas, TRAIL, PI3K等の変動を認め,同時に高率なアポトーシス誘発も確認したが,膠芽腫ではこれらに有意な変化を認めず,p53R2, p70S6K, TRAIL-R, NF-kB, IkBa, IAP, STAT, HSP, VEGF等の発現変動を認め,アポトーシス抑制,生存,その他に関係する経路の関与が示唆された。 2)X線,重粒子線の照射による増殖遅延,再増殖の有無と組織学的変化,遺伝子発現との相関を検討する目的で,X線1, 2, 4, 8, 12, 16Gyをヌードマウス皮下の移植腫瘍に照射後,腫瘍径の計測を実施した。
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