研究課題
脳穿通枝の血流障害は大脳皮質下病変を通じて、認知障害、転倒、誤嚥など老年病症候群と呼ばれる精神・身体疾患に関連する。糖尿病は球後性眼動脈微小血管にも病変を来たし、網膜症治療後もなお進行する視神経障害の原因となる。従来の血管造影では、これらの脳微小血管系を可視化することができなかった。我々は、基礎研究用装置として開発した放射光微小血管造影法、臨床応用を目指す装置として開発した回転セリウム陽極微小血管造影装置を用いて基礎ならびに前臨床研究を行う。1.放射光微小血管造影法を用いた脳微小血管の病態生理学的意義に関する研究:高エネルギー加速器研究機構(KEK)AR-BL7から得た白色をシリコン結晶で単色化(33.3KeV)して被写体に照射し、透過X線を高解像度(25μm)・超高感度撮像系(撮影視野25 mm × 25 mm)等により検出する微小血管造影システムを構築した。週齢20-25週のLETO(対照)ラットにおいて、中大脳動脈から分岐する穿通枝の描出が可能かどうかを検証した。ついでアセチルコリン負荷時の血管拡張反応の定量的評価を実現できるか否かを評価した。糖尿病が脳微小血管の機能・形態に及ぼす影響を OLETF(II型糖尿病)ラットにおいて検討した。糖尿病ラットに頸動脈洞破壊を付加した大脳皮質下白質病変モデルを作成し、その脳穿通枝を含めた脳微小血管の描出を開始した。2.回転セリウム陽極疑似単色X線診断システムの開発とその前臨床研究:麻酔した犬の心臓あるいは脳の血管床に造影剤を充填して摘出し、ホルマリンで固定した心臓あるいは脳を用いて微小血管撮影を行い、人体に匹敵する厚い被写体でも心筋貫通枝や脳穿通枝の描出が可能かどうかを検証した。空間分解能50μmの動画撮影システムで撮影を行った。麻酔した犬を用いて生体下で心臓および脳の微小血管を描出できるか検証する実験を開始した。
2: おおむね順調に進展している
現在までのところ研究及び実験は、概ね予定通り実施できている。
現時点では申請当初の研究計画の変更は予定されていない。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
Nutrition
巻: Volume29,Issue1 ページ: 127-131
10.1016/j.nut.2012.05.003
Cardiovasc Drugs Ther
巻: 26 ページ: 217-226
10.1007/s10557-012-6381-5