研究課題/領域番号 |
23390306
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
村田 智 日本医科大学, 医学部, 准教授 (80322501)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 膵 / 灌流療法 / 経皮的 / 急性期障害 / 亜急性期障害 / 病理学的変化 |
研究概要 |
本研究は難治性膵がん治療のための革新的新技術の開発・臨床応用を目的とし、平成24年度は前臨床研究としての動物(ブタ)を用いた客観的な安全性を得るための研究を行った。以前の研究で問題となっていた注入速度と膵浮腫との関係であるが、注入速度を60, 80 ml/minの2群(各々3頭)に分け30分間の膵灌流療法を施行した膵組織内抗がん剤(シスプラチン)濃度に2群間で有意差はなかった。安全性を十分確保するために注入速度を60 ml/min以下と決定した。また、60 ml/minの注入速度では病理学的検討でも明らかな異常は認めなかった。 本年度の主課題である膵灌流後の急性期・亜急性期の障害の有無およびその程度の検討も行った。治療前、治療後1,3,5,7日目の経時的な膵機能検査を主体にした生化学検査を5頭のブタで施行したが、治療後1日目に最大のアミラーゼ上昇を認めたものの治療後5日目には治療前またはブタの正常値に戻っていた。他の生化学検査では大きな変動はなく急性期・亜急性期の安全性において、臨床前研究として良好な結果が得られた。さらに治療後7日目にブタを全身麻酔下に開腹し、膵・肝・脾・大腸・小腸を摘出して病理学的検討を行ったが、明らかな異常は認めなかった。何れのブタも術後1日目には食欲も旺盛となっており、膵灌流療法は臨床前研究として概ね良好な結果を得たものと考えている。 さらに今年度の研究では膵外の血行動態を通常の血行動態に近づけることで膵灌流療法時の膵外への抗がん剤漏出率が極端に減少することも実証できた(抗がん剤漏出率が0~1%、今までは2~5%)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究計画はすでに終了しており、25年度の臨床研究に向けての研究計画が現在進行中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
世界初となる膵灌流療法は安全性を十分確保できる注入速度60 ml/minが決定された。急性期・亜急性期の障害の検討でもGrade 3以上の障害は認めず十分な安全性を確認出来たと考えられた。さらに、新たに発見された知見を既出の特許出願とは別に新たに作成中である。今後は(現在進行中)、この研究成果を世界の優れた医学雑誌に投稿し、膵がん治療の革新的新治療として広めていくと同時に膵灌流療法の臨床試験の準備を行っていく予定である。
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