今年度実施した内容は、媒質同定法の開発、フォトンカウンティング計測の優位性に対する検証、画像再構成ならびに同定の高速化、スペクトロスコピックCTの適用拡大についての検討などである。 媒質同定法に関しては、試作検出器を用いた実験データを従来から研究されている媒質同定法に適用し、同定の精度などを検証した。媒質同定法としては、主成分分析を用いた方法、特異値分解を用いた方法ならびに最小二乗法を用いた方法である。この結果、媒質同定を行うためのCT画像を作る際の投影データにおいて、そのエネルギーウィンドウ設定値の精度が特に重要である事がわかった。このため、急遽、アイソトープを用いた正確なキャリブレーションを実施して媒質同定の精度を向上させた。また、kエッジを利用した媒質同定についても検討を行い、従来よりもその精度を向上する方法を考案した。 フォトンカウンティング計測の優位性については、前年度購入したエネルギー積分形の検出器を用い、SN比や再構成値の正確さについて比較した。この結果、フォトンカウンティング計測は特に低線量でのイメージングに優位であったが、再構成値の精度はほぼ互角であることがわかった。 画像再構成の高速化に関してはGPU(Graphic processor unit)を用いた高速演算法を開発し、高速化をはかった。これにより従来の再構成よりも約1/20の速度で画像を作ることに成功した。さらに、スペクトロスコピックCTの適用拡大に関しては、重粒子線治療の研究グループとその適用可能性についての検討を行った。重粒子線治療では個々の領域を構成する媒質の原子番号の情報が治療精度を改善することにつながるので、本提案手法の適用は有用であると考えられる。
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