研究課題/領域番号 |
23390308
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
西尾 禎治 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, 室長 (40415526)
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研究分担者 |
西岡 史絵 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, 研究員 (90590315)
中川 恵一 東京大学, 医学部付属病院, 准教授 (80188896)
小泉 哲夫 立教大学, 理学部, 教授 (90147926)
阿蘇 司 富山高等専門学校, 専攻科, 准教授 (30290737)
小澤 修一 順天堂大学, 医学系研究科, 助教 (20360521)
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キーワード | 放射線治療物理学 / 荷電重粒子線照射技術 |
研究概要 |
患者毎の腫瘍サイズに一致させた連続可変拡大ブラックピーク照射法を研究開発し、がんの高精度陽子線治療を実現する。治療用陽子線の照射時間と回転型レンジモジュレーターホイールの回転位置時間の同期を取ることで、陽子線の深部方向の均一線量分布を患者毎の腫瘍サイズに合わせて整形することが可能となる。 回転型レンジモジュレーターホイールの製作では、陽子線がルサイト材を通過する際に失う運動エネルギー、散乱効果などの物理量を精密にシミュレートし、最大SOBPが10cmとなる角度方向に連続的に厚さを変化させたルサイト材の円柱ディスクを製作した。回転型レンジモジュレーターホイールと回転角度に応じて陽子線ビームのon-off制御を行う信号系の出力モジュールを組み込んだ回転駆動システムを構築した。研究開発された照射技術が十分達成されたかを確認するために、連続可変拡大ブラッグピーク線量分布測定技術として、プラスチックシンチレーター検出器を用いた線量分布計測システムを構築した。プラスチックシンチレーターは15cm×15cmの正方形の大きさで厚さが1mmと3mmの2種類の形状の物を利用した。水槽の下面にプラスチックシンチレーターを設置できる装置を構築した。水槽の水深はカメラで観測し、連続的に水深を変化することが可能なシステムを構築した。高精度陽子線線量計算法及び照射領域の可視化シミュレーション法においては、人体組成別画像利用線量計算のための機器構築とソフトウェア開発を実施した。モンテカルロ法による陽子線線量分布計算を可能とするGEANT4シミュレーション・ツールキットを用いたシミュレーション基盤PTSIM(Partic Tenerapy System Simulation Framework)を用いてCT値からその領域区分毎に人体組成に変換するシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に予定していた、回転レンジモジュレーター系、線量分布計測系、人体組成別線量計算系の装置開発はほぼ順調に実施できた。その中で、回転レンジモジュレーター系では、特に陽子線照射と同期する部分において、次年度以降の研究開発内容として、実際の陽子線照射実験を実施しながら装置開発を進めて行かなければならない。線量分布計測系では、プラスチックシンチの発光量の計測データを簡易的に解析できる手法を構築していく必要がある。人体組成別線量計算系では、CT値から組成別に変換する精度を向上させたソフトウェア開発を実施して行かなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究実施計画としては、製作した回転型レンジモジュレーターホイールを組み込んだモジュレーター回転角度陽子線照射同期システムの設計及び開発、高精度陽子線線量計算法及び照射領域可視化シミュレーション法のための人体組成別画像利用線量計算システムの計算手法の考案とソフトウェア設計及び開発を実施する。開発した線量分布計測システムを用いた線量測定精度検証の陽子線照射実験を実施することで、計測システムの機能評価及び機能向上を行う。モジュレーター回転角度陽子線照射同期システムからのトリガー信号を用いることで陽子線加速器からビームon-off制御試験を実施する。その際、照射される陽子線の線量分布測定をプラスチックシンチレーター検出器による線量分布計測システムを用いることで、拡大ブラックピーク幅の時間変動に伴う線量分布形状の動きを実測し、開発した照射システム及び線量分布計測システムの陽子線を用いた初期検証を実施する。人体組成別画像利用線量計算システムにより水の電子密度を基準に電子密度の相違を画像化したCT画像の画素値と人体組成別化画像の画素値を用いた場合での、計算による線量分布形状の相違を検証する。また、それらの情報を用いて、照射領域可視化シミュレーション法を構築する。 研究代表者が中心となり、医学物理学、放射線腫瘍学、基礎物理学、シミュレーション工学の専門家が集い、大学院生を含めた研究体制を構築し、系統的な研究開発を遂行する。
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