研究課題
本研究の目的は、有効な膵ラ氏島移植法を確立する上で問題となっている膵ラ氏島後のグラフトロスに対し、NF-κBやCD40をターゲットとした分子標的治療の有効性を検討し、新しい治療戦略を見いだすことである。本年度は昨年度に続き、サルアロ膵ラ氏島移植モデルで抗CD40抗体によるグラフトロス抑制効果を検討した。膵全摘DM誘導カニクイサルにおいて同種アロ膵島を肝内へ移植した。無治療群は全例9日以内に膵島が拒絶された。抗CD40抗体投与によりドナー抗原に対する細胞性および液性免疫反応は強力に抑制され、抗CD40抗体導入療法群では5例中3例は長期生着し、2例は術後210、250日目にグラフト拒絶されたが、1例は血糖正常で観察期間(>608日)を終えた。抗CD40抗体を6か月目まで週1回投与する維持療法では、消化管蠕動不良で2例が犠牲死、1例は522日間グラフト生着し、1例は血糖正常のまま観察期間を終了した(>607日)。また、NF-κB阻害作用を有するproteasome inhibitor やPPAR-γ agonist の有用性も検討を行った。STZ糖尿病誘導マウスに同種膵島200 個を移植するモデルにおいて、無治療では血糖正常化率10%に対し、bortezomib単回投与群では60% (6/10)まで有意に改善した。イヌ膵全摘後に自家膵島1000 IEQ/kgを肝内へ移植するモデルにおけるPPAR-γ agonistの早期グラフト傷害抑制効果の検討では、無治療の血糖正常化率42.9% (3/7)に対し、pioglitazone移植後3日間経口投与により100%(7/7)で血糖が正常化し、移植後14日目のIVGTT血糖値AUC 0-120も改善した。CD40やNF-κBをターゲットとした分子標的治療は膵島グラフト傷害を有効に抑制する結果が得られ、これら治療法の臨床応用が期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Transplantation
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