研究課題/領域番号 |
23390314
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
|
研究分担者 |
清水 章 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00256942)
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任准教授 (90452333)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | トランスレーショナルリサーチ / 小腸移植 / 免疫寛容 / ミニブタ / 主要組織適合性抗原 / サイトカイン / 腸間膜リンパ節 / 抗HMGB1抗体 |
研究概要 |
平成24年度は、MHC 確立ミニブタ12頭(内6頭はドナー)を用いて小腸移植を行い、移植後の炎症性サイトカインの変化を、レシピエント血清、小腸グラフトリンパ節を用いて検討した。炎症性サイトカインとして、IL1β, IL6, TGFβ, TNFαをELISA法で評価した。3例はこれまでと同様に自己小腸を温存したNon-life supporting graft、残り3例は自己小腸を80%摘出し、残存小腸両断端とドナー小腸を吻合する同所性 Life-supporting graft移植を行った。1例を除きMHC適合間で行った。 小腸移植直後から進行性のアシドーシスならびに血圧低下がみられることから、6症例中3例は小腸血流再開前に抗HMGB1抗体またはステロイド(5mg/kg)静脈投与を行った。無前処置群3例では、血中TNFαは移植1時間値で平均は31pg/mlに上昇し(移植前15pg/ml以下)、移植4時間後平均値は157pg/mlまで上昇した。Non-life supporting法とLife supporting法とも同様の上昇であった。一方、前処置群は、抗HMGB1抗体、ステロイド群とも移植後1持間ではTNFα上昇は認めず(1.9pg/ml以下)、更に移植4時間も抗HMGB1抗体群は19pg/ml、ステロイド群は30pg/mlであり、ともにTNFαの上昇が著明に抑制された。前処置群のうち1例はMHC一部不適合間(partial mismatch)移植であったが、MHC適合間と同様の抑制効果を示した。これらの結果は、小腸移植時に移植時の小腸グラフト腸間膜リンパ節(および小腸パイエルパッチ)からの移植直後のサイトカイン・ケモカインの放出による炎症反応が生じること、および抗HMGB1抗体とステロイドの前処置効果を示し、平成25年度の寛容誘導プロトコールに本処置を含む。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動物移植モデルであり、その遂行におよび人員を要するが、次年度へ続く実験遂行の上でおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、Study 2:Two-haplotype完全不適合間小腸移植での免疫寛容の試みを目的とした実験を行う。 Study 1の発展型としMHC確立クラウンミニブタtype 1とtype 2間で、Two haplotype MHC完全不適合同所性小腸移植を行う。レシピエントは5頭とし、同数のMHC完全不適合SLA型を持つドナーを用いる。これまでの実験において、クラウンミニブタを用いた小腸移植では、これまでMGHミニブタを用いた小腸移植系と異なり、移植直後のサイトカインストームに起因すると思われる血圧低下ならびに易肺水腫状態に至ることが明らかになり、抗HMGB1抗体またはステロイド投与によりそれらの臨床症状が著しく軽減することが明らかとなった。このことから、移植時にドナーおよびレシピエント両者に移植小腸摘出時(ドナー)と血流再開時(レシピエント)にステロイド5㎎/㎏の投与を行う。また、その成果の学会発表ならびに成果の論文報告を行う。
|