研究課題/領域番号 |
23390315
|
研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
梨井 康 独立行政法人国立成育医療研究センター, 移植免疫研究室, 室長 (60321890)
|
研究分担者 |
奥見 雅由 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60512978)
高原 史郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70179547)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 移植・再生医療 / 幹細胞 / 細胞・組織 |
研究概要 |
本年度の研究は、新規免疫抑制剤として、ALA塩酸塩およびクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)の合剤のヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)発現誘導効果を検証し、臓器移植への応用の可能性を検討した。ヘム生合成経路の中間体である5-アミノレブリン酸(5-ALA)は鉄イオン(Fe2+)と同時に細胞に作用させることで著しいヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)発現を誘導した。実際に、マウスマクロファージ様細胞株RAW 264において5-ALAとFe2+を作用させることで細胞内ヘム量の上昇が確認された。ヘムはHO-1転写抑制因子Bach1と結合することでその分解を誘導することが知られている。Bach1を標的とした免疫沈降により得られたサンプル中にもヘムが確認されたことから5-ALAの添加によってもBach1-ヘム複合体の形成が起き、Bach1分解によるHO-1誘導の促進が起きていることが示唆された。同時に、5-ALAとFe2+はHO-1転写因子Nrf2の核への移行を誘導した。また、Nrf2 siRNAを用いたNrf2発現の抑制は5-ALAとFe2+によるHO-1誘導を阻害した。更に、Nrf2の上流にあるとされるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ファミリーであるErk1/2とp38のリン酸化も確認されており、それぞれの阻害剤によって部分的にではあるが5-ALAとFe2+によるHO-1誘導が阻害されたことからこれらの経路がRAW 264における5-ALAとFe2+によるHO-1誘導に関係していることがわかった。これらの結果から5-ALAとFe2+はRAW 264においてヘムへの代謝を促進することでBach1の分解を誘導し、同時にErk1/2とp38を活性化することでNrf2の活性化をもたらす2つの経路によってHO-1を誘導していると考えられた。今後新規免疫抑制剤としての臓器移植への応用の可能性を検討を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間の研究結果を加え、今年度は新規免疫抑制剤として、ALA塩酸塩およびクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)の合剤のヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)発現誘導効果を検証した。今後のin vivoでのマウス移植モデルでの効果の検証、臓器移植への応用の可能性を検討した上、制御性DC、MDSCと併用の効果の検証には大いに役に立つ。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度で確立したiPS細胞から各種DCの簡易・大量に作製するための方法および制御性DCの分化誘導方法、二年目ではMDSCの肝移植モデルを用いた解析およびin vitroでの骨髄からの分化誘導の成功、 マウス心移植モデルを用いたsiRNAを抗原提示細胞特異的なDDS技術と抱き合わせることで、共刺激因子シグナルCD40-CD154の活性化を適切に抑制するによる移植臓器生着延長効果の結果を確認した。今年度は新規免疫抑制剤として、ALA塩酸塩およびクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)の合剤のヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)発現誘導効果を検証し、臓器移植への応用の可能性を検討した。これら免疫抑制機序の解明、動物移植モデルの検証による細胞療法の構築等を通じて、次世代免疫抑制細胞の本質を理解し、新規免疫抑制剤との併用で、安全で安定した免疫抑制状態を誘導するとともに、免疫寛容を成立させる手技を開発していく予定。
|