研究課題
免疫抑制剤は移植医療を確立させたが、半永久的投与、慢性拒絶、感染症・癌、その他副作用等による、身体的、精神的および経済的負担が大きく、新たな拒絶反応抑制方法や薬剤が切望されている。本年度の研究は、昨年度のALA塩酸塩およびクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)のHO-1発現誘導効果の結果を踏まえ、マウス同種異系心移植モデルを用いて、5-ALA/SFCの投与による免疫抑制、免疫寛容の誘導効果を検討した。ドナーマウスにはC57BL/10(B10)マウス、レシピエントマウスにはCBAマウスを用いた。移植後、5-ALA/SFCの投与で移植臓器の長期生着効果が得られ、その効果は5-ALA/SFCの濃度に依存的であった。また、5-ALA/SFCによる長期的な免疫寛容の誘導はHO-1阻害剤ZnPpIXの投与によって完全に失われたことから、5-ALA/SFCによる移植心への長期的な免疫寛容の誘導にHO-1が関係していることがわかった。一方、5-ALA/SFCを投与したマウスの術後14日における移植心ではCD8陽性細胞の増加は確認されなかったが、Foxp3陽性CD4細胞の増加が確認された。これらの結果から、5-ALA/SFCの投与はマウス移植心への免疫細胞の増殖を抑制するとともに免疫応答の抑制に関わるTregの誘導と増殖をもたらすことがわかった。さらに、5-ALA/SFCを投与したマウス移植心や脾臓においてMHC クラスII分子を強く発現しながらも共刺激分子CD40の発現が弱い樹状細胞がみられた。5-ALA/SFCの投与終了後に起こる長期的な移植心への免疫寛容の誘導にはこれら5-ALA/SFCの投与によって増加した免疫制御性樹状細胞が関係していることが示唆された。これらのことから、ALAが既存免疫抑制剤とは全く異なる作用機序を有し、臓器移植における移植免疫寛容の誘導・維持のみならず自己免疫疾患への応用も期待できる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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