研究課題/領域番号 |
23390316
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研究機関 | (独)国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
松野 直徒 (独)国立成育医療研究センター, 臨床研究センター・先端医療開発室, 研究員 (00231598)
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研究分担者 |
水沼 博 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20117724)
小原 弘道 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (80305424)
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キーワード | 肝臓移植 / 肝臓保存 / マージナルドナー / 持続灌流保存 |
研究概要 |
末期臓器不全に対する移植医療における臓器提供者不足を解消するために心停止ドナーを用いるべく保存方法の改良として臨床応用をめざした肝臓持続灌流保存装置を作製し、保存液を改良した。さらにブタを用いて保存条件、保存液の検討を行った。また同所性に肝臓移植を行いその効果について確認した。 1、臓器保存装置の作製:既に報告されているラット、イヌなどの保存装置を参考に灌流流量、灌流圧を定めた。5時間程度の低温保存において組織学的に障害は見られなかった。保存中の酸素に関しては使用した群において良好な経過を示した。 2、保存液の検討:腎臓用に作製された灌流保存液を参考に独自に作成した。細胞内液型よりも細胞外液型において良好な移植成績を示した。 3、低温保存中のviabilityの評価:保存中に静脈より流出する逸脱酵素、特にAST,LDH、ヒアルロン酸は温阻血が長時間であればより高値に検出されることが判明した。また保存中の肝動脈圧の継時的変化を見ることにより障害の程度を判定できることが判明した。 4、温阻血障害を加えた肝臓による移植実験:出血性ショック+呼吸停止+心停止後に摘出された肝臓を用いて低温保存および移植実験を行った。このようなモデルで温阻血障害30分までであれば単純冷却保存方法よりも移植後の経過が良好であることを虚血再灌流後3時間までの採血データ(AST,LDH,乳酸など)および肝生検像において示した。しかし温阻血60分に延長すると本保存方法の優位性は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
保存装置の作製を行い、肝臓のみならず腎臓移植にも応用可能であることを確認した。保存装置については特許出願を行った。障害肝モデルは温阻血障害30分における有効性を確認したうえで現在は温阻血障害60分へ発展させている。これのモデルにおいては従来、行われてきた冷温保存ではなく保存温度を室温程度で行うことで虚血再灌流障害を防げることを見出し学会で報告予定である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床応用を視野にいれ、より厳しい状態の温阻血障害肝をいかに安全に使用できるかについてさらに検討する。特に、温度と保存液、そして灌流条件について多面的に検討する。いままでの評価項目に加え組織中ATP活性の測定、電子顕微鏡での検討を加える予定である。温阻血障害60分モデルで全体的な保存時間の延長(現在は4時間程度であるので8時間、12時間)においても有効か、またさらなる温阻血障害時間の延長、具体的には120分、180分を計画中である。灌流条件においては室温での保存の有効性が示されたが、室温での至適摘灌流条件について検討の余地がある。保存液については、障害時間が長時間になりさらに室温保存となると臓器保存という立場から臓器再生の観点に立たねばならないと考える。このためアミノ酸などの栄養素、酸素、抗酸化剤などについて細胞培養液をモデルにさらに検討する予定である。装置に関しては工業的にデザイン化を行い、パートナー企業を求めてゆきたいと考えている。
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