研究概要 |
末期臓器不全に対する移植医療における臓器提供者不足を解消するために心停止ドナーを用いるべく保存方法の改良として臨床応用をめざした肝臓持続灌流保存装置を作製し、保存液を改良した。さらにブタを用いて保存条件、保存液の検討を行った。また同所性に肝臓移植を行いその効果について確認した。 1、臓器保存装置の作製:既に報告されているラット、イヌなどの保存装置を参考に灌流流量、灌流圧を定めた。保存中の酸素需要度について測定し、肝動脈のみからの酸素供給よりも肝動脈、門脈からの酸素供給を行った方が良好な保存状態であった。 2、保存液の検討:腎臓用に作製された灌流保存液を参考に独自に作成した。アミノ酸や血小板凝集抑制作用をもつデキストランを加えた液を作成した。 3、温阻血障害を加えた肝臓による移植実験:出血性ショック+呼吸停止+心停止後60分で摘出された肝臓および腎臓を用いて灌流保存および移植実験を行った。このようなモデルで2時間の単純冷却、2時間の冷温灌流あるいは22度までの復温灌流を比較した。後者において移植後の経過が良好であることを虚血再灌流後3時間までの採血データ(AST,LDH,乳酸など)および肝生検像において示した。腎臓においては復温群で灌流量の増加、組織血管抵抗の低下を見い出し、腎組織も冷温群よりも良好であった。
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