研究課題
5FUによるLINE-1発現誘導の機序を解明するため、LINE-1のプロモーターをルシフェラーゼの上流に挿入したレポータープラスミドを構築した。これをSW480に一過性発現させ、5-FU投与時のレポーター活性を測定したが、有意な変化を認めなかった。5-FUによるLINE-1発現誘導は転写後の変化と考えられたため、Actinomycin Dを用いて、KINE-1 mRNAの分解速度を解析した。しかし、5-FU投与によりRNAの分解速度にも変化は認めなかった。また、LiNE1 RNAとTSの結合や、LINE-1蛋白の核移行も認めなかった。そこで、上記レポーターを安定発現するSW480を作成して解析したところ、5-FU投与によりレポーター活性の亢進を認めた。これらの結果から、5-FUによるLINE-1発現誘導はクロマチン構造の変化を介していると示唆された。LINE-1による細胞障害活性が5演FUの効果発現に直接関与しているのかを確かめるために、RNA干渉を利用してLINE-1発現を抑制した状態で5-FUの抗腫瘍効果を解析した。5-FUの効果解析にはMTT assayとコロニー形成法を利用した。その結果、いずれの方法においてもLINE-1の発現は5-FUの効果発現に直接は関与しなかった。また、LINE-1のノックダウンによりSW480の増殖は抑制され、LINE-1の発現亢進は細胞障害よりもむしろ細胞増殖に関与していると示唆された。LINE-1の発現を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記で作成したレポーターを安定発現するSW480を使用して、複数の薬剤暴露によるレポーター活性の変化を解析した。その結果、既知の抗癌剤やリン酸化阻害剤の多くはHNE演1の発現を抑制する効果があり、抗腫瘍効果のメカニズムとしてLINE-1を介した機序をさらに検討する価値があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請時に予測していた結果とは一致しなかったため、一部予定の変更が必要となった。しかし、当初予定した研究内容は概ね達成できたため、今後の研究展開の見通しを含めて順調と判断する。
当初LINE-1の機能自体が証FUの効果発現に関与しているとの予測のもとに研究計画を立案したが、平成23年度の研究結果からこの予測が否定された。5-FU投与によるLINE-1の発現変化にはクロマチン構造が深く関与していることが新たに判明したことから、5-FUの効果発現とクロマチン構造の変化が相関する可能性が新たに想定される。今後は、LINE-1の低メチル化とクロマチン構造および5-FUの効果との相互関係をin vitroと臨床検体の両者で解析を進める。
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http://www.kanazawa-u.ac.jp/~ganken/shuyoseigyo/index.html