研究課題
LINE-1のメチル化を新たなバイオマーカーとして臨床応用するために、大腸がんにおける複数の既存バイオマーカーとLINE-1メチル化の関係を探索した。その結果、K-ras codon 12に変異のある大腸がんではLINE-1メチル化は有意に高いという関係を認めた。K-ras codon 13の変異とLINE-1メチル化には有意な関係を認めなかった。B-raf遺伝子の変異を伴う大腸がんではLINE-1メチル化は有意に高かった。チミジル酸合成酵素の遺伝子座におけるLOHを認める大腸がんではLINE-1メチル化は有意に低かった。チミジル酸合成酵素の遺伝子型はLOHにより2, 3G, 3Cのいずれかのアレルだけが残存することになるが、これらのアレルのうち3Gが残存している症例ではLINE-1メチル化は有意に高かった。また、LOHを認めない大腸がんに限って解析すると、LINE-1メチル化は概ね高値であったが、3C/3Cの遺伝子型を持つ大腸がんだけは他の遺伝子型と比較してLINE-1メチル化は有意に低かった。以上の結果から大腸がんの予後や抗がん剤感受性との関連を認める複数の既存バイオマーカーとLINE-1メチル化との間には多くの相関関係を認め、LINE-1自体を予後予測や抗がん剤の個別化に利用できると示唆された。昨年度までの解析で5-FUはLINE-1の発現を亢進させる一方で、多くの抗がん剤はLINE-1の発現を抑制することがレポーターアッセイを用いた研究で明らかとなった。そこで、臨床的に効果が確認されている、5-FUとオキザリプラチン併用時のLINE-1発現状態を解析した。大腸がん細胞SW480を5-FU処理するとLINE-1の発現は亢進するが、オキザリプラチンとの同時処理によりLINE-1の発現はむしろ減弱し、細胞増殖も抑制された。この結果から、臨床で使用されている5-FUとオキザリプラチンの相乗効果にはLINE-1の発現制御も影響する可能性が示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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