脾臓摘出が肝線維化に及ぼす影響とそのメカニズムを解明するため、以下のような実験を行った。 ①マウスを脾臓摘出群と温存群の2群に分け、四塩化炭素(CCl4)及びチオアセトアミド(TAA)で肝線維化を誘導した結果、脾摘群で肝線維化抑制効果を認めた。②脾摘の肝線維化抑制効果の機序を解明するため、肝内のTh1/Th2サイトカインバランスの変化を調査した結果、CCl4及びTAAモデルでは脾摘群でTh1が優位に変化していた。Flow cytometryで肝内のリンパ球のCD4とCD45RCの発現を調べた結果、脾摘によりCD4、CD45RC二重陽性細胞数(Th1)の増加を認め、免疫染色でも同様な傾向を認めた。③免疫不全マウスでは、脾摘群と温存群で肝線維化に有意差を認めず、Thサイトカインバランスの変化も認めなかったことから、肝線維化におけるThリンパ球の重要性が確認された。 ④肝傷害時の脾臓での変化を調査した。HE染色では有意な構造的変化を認めなかったが、CD4の免疫染色にてCD4陽性細胞数の有意な減少を認めた。RT-PCRによるCD4発現及びflow cytometryでも同様な傾向を認めた。一方、肝臓ではCD4陽性細胞数の増加とCD4発現の増強を認めた。解剖学的に脾臓は門脈系を介して肝臓と繋がっており、脾臓から肝臓へのリンパ球の遊走が推測された。 ⑤脾臓から肝臓へのリンパ球遊走を検証するため、全身GFPマウスから脾細胞を分離し、同系の野生型マウスの脾臓内に移植してCCl4で肝傷害を誘導した。その結果、肝臓内でのGFP、CD4二重陽性細胞数は肝傷害後時間依存性に増加を認めた。 ⑥脾臓由来のGFP、CD4二重陽性細胞のprofileをflow cytometryで調査した結果、脾臓由来リンパ球はCD45RCが低発現であり、Th2リンパ球が優位であった。
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