研究課題/領域番号 |
23390324
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
島田 光生 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10216070)
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研究分担者 |
安友 康二 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30333511)
田中 真司 東京医科歯科大学, 情報処理センター・科学技術振興, 特別特認准教授 (30253420)
武田 英二 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00144973)
宇都宮 徹 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30304801)
片桐 豊雅 徳島大学, 疾患ゲノムセンター, 教授 (60291895)
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キーワード | 肝不全 / 加齢肝 / 幹細胞 / マイクロダイアライシス |
研究概要 |
加齢グラフト部分肝移植における機能不全の解明と新たな治療法の開発 本研究では、加齢肝・肝切除モデルを用いて、肝切除後肝再生における加齢の影響を解明するとともに、それらを制御することによる肝再生の改善効果を検討する。 1.加齢肝における背景肝内環境要因の解析 (1)ヒト加齢肝における遺伝子発現解析:当科における肝切除症例を若年群(<60歳:n=39)と高齢群(>70:n=86)に分類し、加齢遺伝子SMP30・SIRT1(Epigenetic制御にも関連)・p16・p66をreal time PCRにより測定するとともにmicro-arrayによる包括的遺伝子解析予定。(2)ラット加齢肝における肝切除の影響:雌性balb/cマウス8週齢以下を若年群(n=5)、16ヶ月以上を高齢群(n=5)とし、real time PCRにより肝切除(Hx)術前SMP30が有意に低値(p<0.05)、SIRT1が高値(p=0.09)、p16が高値(p<0.01)、p66が高値(p<0.05)との結果を得た。さらに肝再生率は術後24hrでは高齢群で高値(p<0.05)、術後48hr(p<0,05)及び72hr(p<0.01)では低値で、術後肝傷害は高齢群で高度であった。これちの知見により加齢肝は肝切除後肝再生が悪くかつ肝傷害も強く、加齢指標マーカーの同定により高齢者ドナーの選別及びその治療ターゲットになる可能性があることが判明した。 2.脂肪由来幹細胞による肝保護効果 Celution System^[○!R]により、ヒト皮下脂肪組織から抽出したADRCはActivin A、HGF、FGF等を含む培地にて約4週間で肝細胞様の形態を呈し、ADRC脾注により術後4週の残肝に抗HLA-1抗体及び抗human albumin抗体陽性細胞を認めた。さらにマウス肝細胞.(1.0×105cell/well)・ADRC(1.0×105cell/well)のcell-cellcontact(-)共培養では、肝細胞のviabilityは共培養群で良好であった(肝細胞単独群vs ADRCs共培養群1.1±0.2%vs 16.6±2.1% in day7)。またbalb/c nu-nuマウスに70%Hx施行後、heparin併用下にADRC(1.0×105cells)を経静脈的に投与(コントロール群:heparinのみ)し、肝傷害は有意に改善し(heparinのみ投与群vs heparin+ADRC投与群:血清GPT 848±75vs.615±82)、肝再生率の上昇とともにADRCの再生肝への強い集積をIVIS^[○!R]Neo-Stem^[○!R]により確認した。今後の予定) ヒト加齢肝における加齢遺伝子発現と包括的遺伝子解析により、ターゲット遺伝子を同定するとともに、脂肪由来幹細胞の加齢肝に対する効果について解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス加齢肝における加齢遺伝子発現とともに肝切除術後再生能の低下、肝障害の増強を確認するとともに、ヒト加齢肝における包括的遺伝子解析も最終段階に来ている。さらに幹細胞の肝細胞分化能、幹細胞移植による肝切除術後肝保護効果も同時に確認することができた。幹細胞の肝保護効果についてはは既に学会報告するとともに加齢肝遺伝子発現についても、本年度発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記結果に加えて、今後は包括的遺伝子解析により得られた加齢ターゲット遺伝子の同定、制御の可能性の探索とともに、加齢肝に対する若年幹細胞移植による若返り効果の解析をさらに推進していく予定である。また加齢肝切除におけるRho-kinase系を介した小胞体ストレス(ROS)の制御やHDACシステムのmodulationによる加齢肝再生・傷害の制御についても検討する予定としている。
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