研究概要 |
線維芽細胞は胃癌の増殖・進展に関与していると考えられ、中でもα-SMA陽性の筋線維芽細胞の関与が示唆されている。しかしながら、癌微小環境における筋線維芽細胞の発現調節のメカニズムは明らかにされていない。本研究は、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。方法は、胃癌間質より樹立した2種類の線維芽細胞(CaF-29, CaF-33)と正常胃壁より樹立した線維芽細胞(NF-29)、および4種類のスキルス胃癌細胞株(OCUM-2MD3, OCUM-12)と非ヒトスキルス胃癌細胞株(MKN-45、MKN-74)を用い、共焦点蛍光顕微鏡にてα-SMA, Vimentin, DAPIで3重標識し線維芽細胞中の筋線維芽細胞の発現割合を継代別に調べ、ウェスタンブロット法にても同様に筋線維芽細胞の発現を検討した。またReal-time RT-PCR法にて胃癌細胞上清、TGF-βを添加しα-SMA mRNAの発現の変化を検討した。その結果、共焦点蛍光顕微鏡、ウェスタンブロット法にて筋線維芽細胞の発現率はNF-29よりCaF-29で有意に多く、継代ごとにその発現率は有意に低下した。TGF-βを添加することによってCaFのα-SMAの発現は有意に増加した。スキルス胃癌細胞より抽出した培養上清を添加することによりCaFのα-SMAの発現は有意に増加したが非スキルス胃癌からの培養上清では増加しなかった。またスキルス胃癌細胞の培養上清によるCaFのα-SMAの発現の増加はTGF-βの中和抗体およびSmad2 SiRNAにて有意に抑制された。以上の結果よりスキルス胃癌間質中には筋線維芽細胞の発現が多く、それにはスキルス胃癌細胞から産生されるTGF-βが深く関与することが示唆された。
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