研究概要 |
スキルス胃癌細胞(SGC)の増殖進展には周囲微小環境に存在する癌関連線維芽細胞(CAF)が関与することを明らかにしてきた。癌の増殖進展により増加した癌組織低酸素領域は、癌細胞の悪性度を促進することが報告されている。しかし、この悪性度亢進機序は明らかにされていない。そこで、低酸素がSGCとCAFとの相互作用におよぼす影響を検討した。SGC細胞株(OCUM-2M, OCUM-2MD3,OCUM-12)とCAF(CaF-53)を通常酸素環境と低酸素環境にて共培養し、増殖能,遊走能や、増殖因子産生、及び増殖因子受容体発現を、細胞数算定やRT-PCR,Western blotにて比較検討した。また、CAFの産生するCXCL12 (SDF-1α)をELISA法で測定し比較検討した。さらに低酸素環境において、c-Met阻害剤やCXCR4阻害剤が癌細胞の増殖能や遊走能におよぼす影響を検討した。SGCはCAFと共培養することで、通常酸素では増殖能は1.3倍、遊走能は1.4倍に増加したのに対し、低酸素環境ではさらに、増殖能が1.6倍、遊走能が2倍に増加した。低酸素環境は通常酸素に比し、SGC細胞のCXCR4発現が亢進し、CAFのCXCL12産生も2.5倍亢進した。低酸素環境はSGCの増殖浸潤を促進していた。
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