研究課題/領域番号 |
23390333
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
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研究分担者 |
小池 薫 京都大学, 医学研究科, 教授 (10267164)
板東 徹 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20293954)
阪井 宏彰 京都大学, 医学研究科, 講師 (50362489)
庄司 剛 京都大学, 医学研究科, 助教 (80402840)
藤永 卓司 京都大学, 医学研究科, 助教 (00444456)
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キーワード | 心停止ドナー / 肺潅流 |
研究概要 |
日本における脳死ドナー不足は、臓器移植法が改正された後も続いている。心停止ドナーからの肺移植が可能となれば、多くの患者の救命につながる。体外循環装置を用いた肺還流(Ex-vivo lung perfusion=EVLP)は、ドナー肺機能を移植前に評価できるだけでなく、摘出時にすでに存在する傷害を修復する可能性を持っている。つまり、EVLPにより、必要な酸素・栄養・エネルギーの供給、微小血栓の溶解、間質に貯留した水分の除去、無気肺の改善、などが可能と思われる。そこで、心停止ドナーから摘出した大動物肺を体外で還流し、温虚血による傷害を修復することにより、肺移植臨床応用をめざすことを目的に平成23年度の実験を実施した。 平成23年度の実験群と実験方法 体外肺循環EVLPによってドナー肺の傷害を修復する方法と、現在広く臨床で使用されている冷保存法を比較するために以下の2群を設定し、比較検討した。当初ミニブタを使用する予定であったが、入手困難となったため、ビーグル犬を使用して実験を行った。 ・EVLP(Ex-vivo肺修復)(n=6) 心停止4時間後に摘出したドナー肺をEVLP回路にて、3.5時間の還流を行った。 ・冷保存群(n=6) 心停止4時間後に摘出したドナー肺をET-Kyoto液にて、3.5時間の冷保存(4℃)を行った。 両群とも、保存後左肺を分離し、これを別に準備したレシピエントの左肺として移植した。移植後、右肺動脈を閉塞し、移植肺の機能を4時間計測した。 実験結果 EVLP群では、PaO2は437±68mmHgから558±35mmHgにEVLP中に有意に改善し、冷保存群よりも移植後のPaO2、肺コンプライアンス、肺湿乾燥重量比、肺組織ATPが有意に良好であった。また、組織学的評価では、EVLPによって、微小血栓が減少していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、EVLP群と冷保存群の比較は、保存後のEVLP、つまり灌流モデルによって評価する予定であった。しかし、より臨床肺移植に近く、平成25年度に使用する予定であった左片肺移植モデルを使用することとした。その結果EVLPの有用性を、EVLP中だけでなく、肺移植後にも証明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように平成23年度は、大動物によるEVLPおよび左片肺移植モデルが機能し、EVLPが従来行われてきた冷保存法よりも有用であることを示すことができた。したがって、平成24年度は、当初の計画通り、EVLPの至適温度に関する実験を行う予定である。
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