研究課題/領域番号 |
23390334
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥村 明之進 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40252647)
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研究分担者 |
南 正人 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
澤端 章好 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50403184)
井上 匡美 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10379232)
新谷 康 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90572983)
中桐 伴行 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70528710)
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キーワード | 肺移植 / 慢性拒絶反応 / IL-6 / Th17 |
研究概要 |
肺移植は心・腎・肝の移植とともに確立した治療として認識されつつあるが、肺移植後の長期生存率は未だ満足すべきものではなく、その原因として遠隔期での慢性拒絶反応の制御の困難さが大きな因子となっている。近年、自己免疫疾患におけるeffector細胞としてTh17細胞が注目を集めており、当教室は動物実験モデルにおいて、肺移植後の拒絶反応である閉塞性細気管支炎の発症機序におけるTh17細胞の関与を明らかにしてきた。 Th17細胞の分化にはIL-6が深くかかわっており、局所の炎症で繊維芽細胞などが分泌するIL-6によりTh17細胞が誘導されると、そのTh17細胞がさらにIL-6を産生し、Th17細胞の分化が一層促進されるというIL-6 amplificaton回路が働くことが知られている。これまでの我々の研究では、抗IL-6抗体の全身投与がTh17細胞の分化を抑制し、マウスモデルにおける慢性拒絶反応を抑制することを明らかにしてきた。 今回の研究では、IL-6 receptorから細胞内に入るシグナルを抑制することにより、Th17細胞の分化が抑制され拒絶反応が抑制されるかどうかを検証している。 IL-6 receptorからのシグナルはJAK2/STAT3を介して核に伝達されることが知られている。またTh17細胞への分化における重要なregulatorとして、IκBζという分子の役割が明らかにされている。これらの細胞内タンパクの発現の抑制と機能制御はTh17細胞分化の抑制を通して、肺移植後の慢性拒絶の克服につながると考えられる。 このような方法論が確立されれば、肺移植の術後生存率が飛躍的に向上すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STAT3は亜鉛イオンによりconformation変化が生じ、機能が抑制される。 亜鉛イオンを経口投与したマウスをレシピエントにして移植を行ったところ、慢性拒絶が認められなかった。 現在、この移植モデルにおけるグラフト内で亜鉛イオンによりSTAT3の活性化が抑制され、その下流で制御されている遺伝子の発現が抑制されているかどうかを解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
IκBζはTh17の発現を制御しており、IκBζノックアウト・マウスではTh17によって誘導される自己免疫疾患の発症が抑制されている。今後、IκBζの発現を抑制する方法を開発すれば、強力な拒絶の抑制が得られる期待される。我々はsiRNAを用いたIκBζの発現抑制の開発を試みている。この方法が確立されれば、移植医療の成績向上に貢献するだけでなく、自己免疫疾患治療にも新展開がもたらされる。
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