昨年度までに健常者を対象とした末梢血単核球細胞(PBMNCs)が低酸素プレコンディショニング処理により機能増強されること、また、中型動物の自己PBMNCsに対する低酸素プレコンディショニングおよびその下肢血流改善効果を検証してきた。本年度も引き続き本研究を進めてきたが、下肢虚血患者を対象としたヒト幹細胞を用いた臨床研究の認可が依然としておりないために研究計画が大幅に遅れてしまった。厚生労働省とのやり取りの中で指摘された点について全て検証・修正し、申請書修正版を提出したところである。本年夏には認可がおりるものと考えている。そこで本年度は、臨床研究を円滑に開始させる為に健常者サンプルを用いて低酸素プレコンディショニング条件の詳細な検討を行った。その結果、ヒト細胞においても2%O2条件に短時間暴露することによって、血管新生因子産生および酸化ストレス抵抗性などの機能増強が最も促進されることを明らかにした。また、低酸素プレコンディショニングによって健常者のPBMNCs内の細胞分布が生じないこと、コールドラン試験および細菌検査項目の選定など、臨床試験に向けた最適化プロトコルを作成した。さらに、中型動物を用いた前臨床試験で認められた血流改善効果の分子機構の一端を明らかとし、学会発表および国際誌への投稿をおこなった。
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