研究課題/領域番号 |
23390337
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任准教授 (90452333)
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研究分担者 |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
長嶋 比呂志 明治大学, 農学部, 教授 (50318664)
伊達 洋至 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60252962)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / 異種肺移植 / 急性期肺機能不全 / GalT-KOブタ / Ex-vivo灌流 / カニクイザル / 一酸化炭素 / 移植・再生医療 |
研究概要 |
異種間超急性拒絶反応の標的抗原α-Galを発現しないGalT-KOブタの開発を契機にブタ・霊長類間異種移植研究は進んだものの、異種移植肺の生存は数時間であり、急性期移植肺機能不全におけるGalT-KOブタ役割を明確にすることに加え、肺の特異性から生ずる血管内皮細胞障害を契機とする異種間の凝固・炎症反応異常亢進の制御が必須である。平成23年度には、目的1として、GalT-KO肺が急性期肺機能不全を回避しうることを大動物Ex-vivo肺移植モデル実験により示した。平成24年度には、カニクイザルを用いた左同所性肺移植モデルでの実験を開始し、①Ex-vivo実験とin-vivo肺移植実験結果の相同性評価、②血管内皮障害を契機とする異種移植肺特有の異常凝固・炎症を制御するため、ミニブタ同種移植モデルにより強力な血管内皮保護作用を有することが示された一酸化炭素(CO)を中心とした治療効果を明らかにする目的2、3へ実験を進めた。 その結果、①In-vivo移植モデル(ミニブタ・カニクイザル左同所性肺移植)から(n=2)、Ex-vivoモデルと同様に、移植後2時間で、GalT-KOブタを用いた肺移植では、術後2時間の時点で血小板減少は約40%前後に抑制され、Ex-vivo実験の再現性が得られたとともに、組織学的にも超急性拒絶反応は抑制されており、GalT-KOブタ肺を用いることによる超急性の移植肺機能不全制御に対する効果が明らかとなった。②Gal-KOブタへのCO投与による移植肺血管内皮細胞保護効果に基づく異種移植肺生着延長効果を検討したところ(n=4)、病理学的には術後2日までの時点で移植肺障害抑制効果が確認された一方、microangiopathyによる移植肺機能不全は抑制されず、急性期異種移植肺機能不全の克服には、COに加え更に治療を追加する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は、異種肺移植の急性期機能不全を克服するための評価系として、H23年度に確立したEx-vivo 異種肺移植による評価方法が、In-vivo左肺移植実験結果と相同性があることを示し、Ex-vivo、In-vivo移植実験系を適宜用いることにより、様々な治療指針の効果を示す実験評価系となりうること示した。同時に、Ex-vivoおよびIn-vivo肺移植モデルのいずれにおいても、GalT-KOブタの肺を用いることによって、超急性期肺機能不全および急激な血小板減少を回避しうることを示すことができた(目的1および目的2)。一方、これまでの自験例で、ミニブタ同種肺移植および虚血再灌流モデルによって、強力な血管内皮保護作用、抗炎症作用が示されている一酸化炭素の投与による血管保護作用の強化をはかった実験を行ったところ、病理学的には肺障害の軽減が得られたものの、microangiopathyによる異種移植肺の移植後急性期の機能不全を十分には制御することができなかった。今後、GalT-KO+一酸化炭素+αの治療薬を確立する実験を推進することによって、「血管内皮障害を契機とする異種移植肺特有の異常凝固・炎症を制御する治療法の確立」が得られるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、特にIn-vivo肺移植実験モデルを用いて、異種移植肺の急性期機能不全を防ぐ治療方法の確立を主目的とする実験を進める。特にH24年度の実験で得られた、異種移植肺のドナーに対して一酸化炭素投与を行った場合(同種移植実験では著明な血管内皮保護と炎症制御作用によってグラフト肺が保護され、移植後成績も改善するという結果化が得られている)、異種移植肺の組織学的な改善効果が得られる一方で、microangiopathyによる異種移植肺の機能不全制御が不十分であったという点を重視した実験を継続する。具体的には、一酸化炭素投与に更に血管内皮保護効果や炎症制御効果を強めることを目的とする抗HMGB1抗体投与、可溶性トロンボモデュリン投与に加え、異種肺移植後に生ずる異常な血小板活性化を制御することを目的として、vVWの制御のためのdesmopressin投与、更に、マクロファージ制御を行う治療方法を加えた実験を推進する(目的3)。このように、これまでの同種移植実験あるいは論文報告から異種移植後の血管内皮細胞障害や異常炎症反応亢進、異常な凝固活性化に対する抑制効果が期待される薬物を移植前後に追加投与することによって、異種肺移植実験における急性期異種移植肺機能不全の克服をはかり、前臨床実験として、異種肺移植の臨床応用へ結び付けるための基礎実験データを得る実験を推進する。更にこれらの結果から、将来的には更なる遺伝子改変ブタ(ノックアウトあるいは遺伝子導入ブタ)の開発へと結びつけ、異種移植研究の推進をはかる。また、研究成果を国内あるいは国際学会で報告するとともに論文の作成を積極的に行い、研究成果の情報発信に努める。
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