研究課題
異種肺移植の最大の問題である、肺の特異性から生ずる血管内皮細胞障害を契機とする異種間の凝固・炎症反応異常亢進の制御に対し、平成23から24年度にかけて、GalT-KO肺が急性期肺機能不全を回避しうること、さらにGal-KOブタへの一酸化炭素CO投与によって、術後早期の移植肺障害抑制効果が得られることを示した。しかし、microangiopathyによる移植肺機能不全は抑制されず、急性期異種移植肺機能不全の克服には、COに加え更に治療を追加する必要性が示唆された。これらの結果をもとに、H26年度はドナーに対するCO投与に加え、1)ドナーおよびレシピエントに対するステロイド投与によって術後超急性期のサイトカインストームから生ずる血管内皮障害を制御すること、2)ドナーに対してデスモプレッシンを投与することによって、異種肺移植後に生ずるブタvWFを介する異常な血小板活性化を制御し、微小血栓障害の制御をはかること、の2つの手法によって、急性期機能不全制御法の確立を目的とする実験を進めた。これらの治療の結果、1)ステロイドの投与のみでは急性期の肺機能不全に対する更なる投与効果が得られなかったが、2)デスモプレッシンの投与によって、術後2日目までは移植肺は良好に機能し、かつ血栓形成は軽度であることが明らかとなった。しかしその後急速に血栓形成が進行し、術後3日にはびまん性に血栓形成から肺出血を呈し、移植肺機能不全を呈した。現時点では、一酸化炭素、あるいはデスモプレッシンなど、異種移植肺の急性期(移植後2日間)機能不全の抑制効果を有する治療法が見出されてきたが、今後これらの知見を基にして、長期効果が得られる治療戦略の確立と、新たな遺伝子改変ブタ(ノックアウトあるいは遺伝子導入ブタ)の開発が異種移植肺杞憂性機能不全の克服には必須である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Xenotransplantation
巻: 20(3) ページ: 157-64
10.1111/xen.12031