研究課題/領域番号 |
23390345
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山本 清二 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 教授 (60144094)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 神経科学 / 虚血耐性 / 神経保護 / 共焦点顕微鏡 |
研究概要 |
UCP-4が発現すると赤色蛍光も同時に発現するレポーターベクターを初代培養大脳皮質神経細胞に発現させ、長時間観察を試みたが、神経細胞に形態学的変化(カルシウム信号等のdeath signalが入った際に観られる細胞核の変化)が見られ、神経細胞の生存が不十分であったので、UCP-4発現はRT-PCRおよびWestern blottingにより検討した。その結果、初代培養した大脳皮質神経細胞に、ミトコンドリアkATP channel opener であるdiazoxide (30μM)を投与して1時間incubateし8時間のpost-incubationを経ると、UCP-4 mRNAおよびUCP-4蛋白の発現増加を確認した。Superoxide Dismutase (SOD 5μM)により活性酸素(スーパーオキシド)を消去すると、ベースラインの UCP-4 発現とdiazoxideにより誘発されるUCP-4発現が抑制された。 昨年度から継続して培養神経細胞の結果を個体レベルで検証した。SHRラット(12 週、オス)に脳室カニュラを設置し、UCP-4が発現すると赤色蛍光蛋白(TOMATO)も同時に発現し観察できるUCP-4発現レポーターベクター(プラスミド)をin situ Lipofection法により発現させた。diazoxide (10 mg/kg)を腹腔内投与し72時間後に脳スライスを作製して、蛍光顕微鏡によりUCP-4の発現を赤色蛍光蛋白の蛍光強度の変化を観察して検討した。その結果、蛍光強度はコントロール群に比較してdiazoxide投与群では、大脳皮質において有意にdiffuseな増加を示した。これまでの結果を総合すると、UCP-4の発現にはミトコンドリアでの活性酸素(スーパーオキシド)の発生が引き金であること、Neuro2A (N2A) cellにおいても、致死的ではない量の活性酸素(スーパーオキシド)を発生させるsublethalな 3ニトロプロピオン酸(1mM、5mM、2時間暴露)によりUCP4が発現し、細胞は低酸素耐性を獲得していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、培養大脳皮質神経細胞にUCP-4レポーターベクターを発現させ、かつ神経細胞を安定して48時間まで培養顕微鏡で観察する系を確立し培養神経細胞で検討する予定であった。神経細胞に負荷をかけないtransfection法を工夫するため、培養液中にB27等を添加し効率的でかつ神経細胞への傷害性が少ない方法を検討したが、実験に使える系は残念ながら確立できなかった。そのため、UCP-4発現はRT-PCRおよびWestern blottingにより検討したが、UCP-4が発現した培養大脳神経細胞の細胞死プロセスにおけるカルシウム流入の抑制、ヒドロキシラジカルの産生の抑制の検討ができなったので「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、脳電気刺激による虚血耐性のメカニズムを詳細に検討し、その結果を臨床応用するための橋渡し研究(臨床応用可能な実験的治療法の確立)を行うことを目的としている。最も重点を置くべき目標は、(1) UCP-4発現が誘導されるメカニズムを明らかにすること;(2) 神経保護的なメカニズムを損なうことなくUCP-4を発現させる他の方法により、将来臨床応用可能な実験的治療法を探索することである。(1) UCP-4発現が誘導されるメカニズムは本研究で明らかにできたので、研究期間内には、神経保護的なUCP-4を発現させる他の方法を検討する必要がある。 なお平成25年度には、UCP-4を発現させて虚血耐性を誘導すると予想している三叉神経刺激条件の検討を開始したので、最終年度には三叉神経電気刺激によるUCP-4発現と虚血耐性獲得の有無を検討する予定である。これが機能すれば、小脳電気刺激より侵襲性が少ない方法による実験的虚血耐性の獲得が可能になり、将来の臨床応用の可能性が視野に入る。
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