研究課題/領域番号 |
23390346
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水野 正明 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (70283439)
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研究分担者 |
岡本 行広 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50503918)
渡慶次 学 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60311437)
大森 雅登 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70454444)
湯川 博 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任講師 (30634646)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / 半導体ナノ結晶 / 中空ファイバ / 診断 / 治療 |
研究概要 |
本年度は、浸潤がん細胞を可視化するための技術を確立するため、以下の研究を行った。がん細胞に特異性を持たせるため、がん細胞に高発現するトランスフェリン(Tf)受容体に注目し、Tfを結合させた量子ドット(QDs-Tf)を開発し、脳腫瘍細胞(U87)に対する標識能について検討した。その結果、U87にQDs-Tf が効率よく取り込まれることを確認した。今後も引き続きがん細胞の選択性の向上を目指すとともに、in vivoでCED(脳内対流伝達)法並びに中空コアファイバ技術の有用性を検証する。 次に、浸潤がん細胞を死滅させるための技術を確立するため、以下の研究を行った。半導体ナノ粒子からの自由電子、ラジカル、イオンなどの発生技術の基礎研究として、ナノ粒子への電界印加による光物性評価を行った。ナノ粒子は、CdSe/ZnSコアシェル型コロイド量子ドットで、粒径はおよそ8.1nmでピーク波長625nmの赤色の蛍光を発するものを用いた。コロイド量子ドットはITO透明電極を蒸着した石英基板上に薄く塗布し、その薄膜上にAl電極を蒸着することで、コンデンサ状の素子に加工した。その後、コロイド量子ドット薄膜試料の電圧印加時の蛍光スペクトルを測定した。その結果、電圧印加に伴って蛍光寿命が短くなっている様子が確認できた。これは、電圧によって電子と正孔が分離し、量子ドットのシェル表面に押し付けられ、表面欠陥や表面不純物などの非発光センターに捕獲される確率が増したことによると考えられた。したがって、量子ドット内で発生した電子を電圧印加によって外部に取り出すためには、表面パッシベーションや表面修飾材料の工夫などにより表面欠陥などの影響を排除する必要があることがわかった。今後はこれらの結果をもとに、コロイド量子ドットの物性評価をさらに進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、研究実施計画書に従い、「1.浸潤がん細胞を可視化するための技術の確立」と「2.浸潤がん細胞を死滅させるための技術の確立」に関する基盤研究を進めた。前者においては、まず生体組織で高い透過性を示す近赤外領域に蛍光波長を有する半導体ナノ結晶の製造技術の開発を進め、低毒性の半導体ナノ結晶の製造に成功した。一方、後者においては、コロイド量子ドット中からの自由電子を取り出す技術の開発を行い、量子ドット外部に自由電子を効率良く取り出すためには、表面欠陥の少ない量子ドットを作製する必要があることを見出し、現在も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの成果を受け、最終年度は以下の研究を進め、研究を仕上げる。 1.浸潤がん細胞を可視化するための技術の確立 ①生体組織で高い透過性を示す近赤外領域に蛍光波長を有する半導体ナノ結晶製造技術を確立し、新しい医薬品としての可能性を模索する(渡慶次、岡本、湯川が担当)②ナノリポソーム法とCED(Convection-enhanced delivery:脳内対流伝達)法並びに中空コアファイバ技術を活用したナノ結晶の細胞内移行技術を開発し、臨床応用への道筋をつける(水野、渡慶次、岡本が担当) 2.浸潤がん細胞を死滅させるための技術の確立 ①浸潤がん治療のためのナノ結晶からの自由電子、ラジカル、イオン等発生技術を開発し、中空コアファイバの断面形状の最適化を目指すとともに、細胞特異的に浸潤がん細胞を死滅させるストラテジーを確立し、診断と治療を一体化した医療デバイスの開発につなげる。(大森、川西、水野が担当)
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