研究概要 |
多能性組織幹細胞のうち、神経細胞へ分化することができて実際に神経再生医療に用いるために使用可能な細胞は、神経幹細胞、間葉系組織幹細胞などである。本研究では、多能性組織幹細胞として、既に単離後、樹立した神経幹細胞と間葉系組織幹細胞の一種である皮膚由来間葉系幹細胞を用いた。これまでの研究でBCボックス蛋白においてはリガンドであるエロンジンBCが結合する部位のアミノ酸配列が神経分化ドメインとして同定されているので、神経幹細胞と皮膚由来幹細胞に神経分化誘導活性のある11種類のBCボックス蛋白由来の機能性ペプチド(SOCS1-7, ASB3, WSB2, LRR1, VHL由来)を細胞内へ導入し、神経特異的蛋白の発現を蛍光免疫細胞化学およびウエスタンブロット法にて解析した。この結果として、11種類の機能性ペプチドは、分化誘導するニューロンのタイプがそれぞれ異なっていたが、神経幹細胞と皮膚由来間葉系幹細胞で分化誘導されるニューロンのタイプは同じであった。具体的には、VHLとSOCS7由来のペプチドは、ドーパミンニューロン, モーターニューロン, GABAニューロンを分化誘導し、SOCS5由来のペプチドは網膜色素上皮細胞とグルタミン酸ニューロンへと分化誘導した。また、SOCS5, 6由来のペプチドは、グルタミン酸ニューロンこれらの機能性ペプチドの神経分化誘導メカニズムに関しては、BCボックス蛋白由来のペプチドが組織幹細胞へ導入されるとエロンジンCと細胞内で結合し、その直後にStatの発現が阻害されることとことから、これらのペプチドがエロンジンBCとエロンジンAとの結合を拮抗阻害することとStat3の分解が神経分化誘導を惹起しているもの考えられた。以上の結果から多能性組織幹細胞を目的の神経細胞へ分化誘導後移植することによる神経再生医療の実現のためにこの研究成果は大いに貢献すると考えられた。
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