研究課題
本研究の目的は、脳幾能イメージング去を用いて失語症患者に残存する言語目断幾能を検索し、その結果に基づいて言語回復のリハビリテーションメニューを設計支援する、新たなテーラーメード脳機能画像診断法を創出することである。近年、失語症患者の言語機能の回復は、言語処理に関係しない部位の新たな機能獲得ではなく、残存する言語脳機能の活用によるという説が有力になりつつある。そこで、本研究では、MEG、fMRI、光トポグラフィを組み合わせたマルチモーダルな脳機能イメージング法によって言語課題遂行時の失語症患者の脳活動のパターンから残存言語脳機能を最大限に活用するための、患者の状態に即した最適なリハビリテーションメニューの設計支援を行なう。これらを統合して、失語症の回復を支援するための、テーラーメード脳機能画像診断システムの基礎を構築する。初年度の探索的研究において、失語症患者の残存脳機能探索に有望と見られる2つの課題が見いだされてきた。第一の呼称課題は、比較的重度の失語症患者にも遂行可能である頑健な課題であることが分かった。第二の語流暢課題は、遂行が可能な場合には、振幅の大きなシグナルが得られ、時間応答特性が多様であるという点で、情報量の多い課題であることが分かった。また、光トポグラフィによる計測が失語症患者の残存脳機能探索には極めて有望であることが実証されつつある。従来の解析法は100msという光トポグラフィの時間分解能を活用したものではなかったが、計測タイムポイント全点の情報を有効に活用する一般線形モデルの導入、及び、これに用いる基底関数を動的に変動させる新規解析法を開発が有望であるという可能性が浮上しつつある。この新手法によって、計測データから得られる情報が飛躍的に増大するため、今後の検討をさらに進めていくことが有望と考える。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に比べ、MEGによる言語関連脳機能計測については適切な課題が見いだせていないが、光トポグラフィについては、適切な言語課題を見いだせたとともに、予想外の方法論的発展がなされた。また、これに伴う論文発表も順調に進行している。全体的には、概ね順調な進行状況と考えられる
平成24年度は、亜急性期の30名程度の重症失語症患者に対して、呼称課題による脳機能解析を実施する。亜急性期の失語症患者の脳機能イメージング研究は技術的困難を伴うため、これまで、数例程度の報告しかなされていないが、本研究で行う計測は、最大規模のものとなる。統計的にもグループ解析に耐えうる規模の計測例であり、臨床医学的にも極めて有用なデータが得られると期待される。一方、語流暢課題遂行に伴う脳の時間応答から有用な情報を抽出するため、一般線形モデル(GLM)による解析系を探索する。具体的には、従来用いられてきた単一の脳血流動態応答関数(HRF)による解析ではなく、課題の時間特性に合わせて、探索的にHRFを変化させる新手法の適用を試みる。これによって、光トポグラフィの高時間分解能を活用した言語機能検査法の創出を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Neurobiology of Aging
巻: (In press)
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